結成20周年を迎えるHYのこれまでの歩みとこれからについて

昨年末のボーカル新里のソロ活動の開始を始め、先のメンバーの仲宗根復帰による5人でのライブの再開等々、ここにきてHY周辺の活動がまた賑やかになってきている。それもそのはず、彼らは来る2020年には結成20周年を迎え、それに向けてのカウントダウンが始まったのだ。

そして、それがさらに活発になっていくのが、今夏以降。まず手始めに、8月8日には彼らに縁が深いアーティストたちによる愛着と愛情のこもったトリビュート盤『CHANPURU STORY ~HY tribute~』が、続く8月22日にはファンの人気投票で選ばれた曲たちを基に初めてセルフカバーに挑んだベストアルバム『STORY ~HY BEST~』が発売された。

HYトリビュート『CHANPURU STORY 〜HY tribute〜』ティザー映像

以降も年末や来年にかけて、各種夏フェスや全国インストアライブ、全国ツアーと、作品にライブに更に勢力的に活動していく所存だと言う。

ここで今さらながらHYについてざっと振り返ろう。

2000年に現在も在住し続けている沖縄の東屋慶名(Higashi Yakena)にて結成された彼ら。バンド名のHYはその地名のイニシャルからとられたものだ。

メンバーは新里英之(ギター、ボーカル、三線)、仲宗根泉(キーボード、ボーカル)、宮里悠平(ギター)、許田信介(ベース)、名嘉俊(ドラム)の5人。結成以来、一切のメンバーチェンジはない。

これまで、愛溢れ、心温まる歌や人恋しくてたまらない数々の名曲を数多く世に送り出してきた彼ら。2001年に1stアルバム『Departure』をリリース。2003年にリリースした2ndアルバム『Street Story』ではインディーズ初のオリコン初登場&4週連続1位を達成。ミリオンセラーを記録する。

以降、これまでに12枚のオリジナルアルバムをリリースしてきた。2008年の映画×ドラマ『赤い糸』の主題歌「366日」(5thアルバム『HeartY』収録)を始め、「時をこえ」「いちばん近くに」「二人で行こう」等々代表曲や人気曲も多数な彼ら。その魅力の一つは、その沖縄に在住し続け、そこに居続けるが故の視点や環境、視野や想い、ピュアさ等々が各楽曲に反映されているところ。そこに思いを重ねるファンや聴き手も多い。

366日 – HY

当初は、新里、名嘉のツインボーカル性やラップ、パンキッシュな音楽性のいわゆるバンドサウンドがメインでスタート。切り込んでいくような名嘉のラップも武器の一つであった。そのうち表現力や感受性の向上に伴い、徐々に音楽性のテーマも愛や景色、おおらかなものへと移行していき、仲宗根をボーカルとしてコントラスト的に多用しだしてからは、気づけばラブソングやダイナミックな歌の代名詞のグループへと変貌していた。

まさにHYが一人の人に例えるのなら、そこで色々な経験を経て、楽しいだけじゃなく、いろいろな気持ちや感情を憶えて、それを作品の中に反映してきたところはあります。自分たちの夢に向かってのスタートから、回りの人への感謝の気持ち。世界の平和や子供たちに向けてとか。そこから逆に、ただそばに居て、大好きな人に気持ちを届けたい。一対一で直接伝える歌に変化していったり。それこそ色々な経験をして、知り、学び、気づき、そんな中から生まれた各曲だったんだなと改めてき感じました。(Vo/Gt:新里英之)

ホント色々なことをやってきましたからね。ある時、ヒデの優しい声質やイズの女性なんだけど太くて力強い声質というのを段々と自分たちの表現したいもの、表現に合ったものがまとまってきたんですよね。やはりHYの特徴の一つはこの2つの違った声質ですから。それぞれもだけど、それが合わさってマッチングした際のハーモニー、これはもう自分たちだけの武器なんです。(Dr:名嘉俊)

当初はハードなものを好んでいたこともあり、なかなかピアノや私の歌や世界観で入っていける領分ではなかったんです。だけど作風が変ってきて徐々に入っていけるようになって。で、曲調が変わるにつれて役割が増えてきた感があります。(Key/Vo:仲宗根泉)

そんな中、8月8日にリリースされたトリビュート盤『CHANPURU STORY ~HY tribute~』。これがなかなかユニークだ。仲が良く交流の深い方々から昔から尊敬している地元沖縄の先輩まで。参加アーティストの多種さや男女の比率のバランスも良く、意外な組み合わせや改めて交流関係の幅やジャンル関係なしに来たことに気づかされた。

そして、各人の解釈も興味深かったのだが、逆にそこから改めてHY自身のメロディメイクや歌の良さの新発見もあった。優しくやわらかなアレンジも印象的なこのトリビュート盤。意外だったり、感心させられたり、各人による彼らの解釈も興味深く、穏やかでおおらか、人間味があるのも特徴的に感じた。

ここでざっと各曲を駆け足で紹介しよう。

クレイユーキーズ with 井上苑子による柔らかい男女デュオに生まれ変わった「AM11:00」を皮切りに、スカ&ホーンも取り入れ、軽快さが呼び込まれた同じ沖縄在住の同世代バンドMONGOL800による「隆福丸」。ナイトチックで浮遊感を有した、しっとりとアーバンな感じに仕上げた加藤ミリヤ「NAO」、ウクレレを交えたアコースティックタッチのR&B化させた青山テルマ「昔の人よ」。

1. 「AM11:00」/HY
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2. 「隆福丸」/HY
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3. 「NAO」/HY
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ピアノロックのエレガントさも面目躍如なWEAVER「ささくれ」、景色観のあるパーッと明るいアプローチで可愛い感じの上白石萌音「HAPPY」、女性曲ながらこの歌声だからこそしっくりときた清水翔太「Song for…」、彼ら特有のバイオリンロックが聴き手の耳を奪う、優雅さと激しさを同居させた金井、真央の男女ツインボーカルも白眉だったBIGMAMA「ホワイトビーチ」。また、ラスト2曲はガラリと雰囲気が変わり、沖縄のオーセンティックさがふんだんに楽しめた。

琉球旋律を基調に、三線と歌を中心にシンプルに伝えた宮沢和史「帰る場所」、あえて最後は地元の至宝とも呼べる沖縄民謡にてネーネーズ「366日」が沖縄の空を想起させるような独特の歌声とハーモニーで締めてくれた。

4. 「Song for…」/HY
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豪華な方々が集ってくれて。まさしくタイトル通り、HYのミクスチャー/チャンプルー具合を表してくれました。(Vo/Gt:新里英之)

それこそジャケのようなゴーヤチャンプルーな、色々な具材が混ざり味を出し合う。そんな作品ですね。全然聴き飽きない。(Dr:名嘉俊)

自分たちの曲なんだけど、完全にみなさんの曲になってたり。だけど自分たちの良さや楽曲で大切にしてた部分はリスペクトされ、より際立たせてくれてたり。自分たちの楽曲たちながら色々と新しい発見もありました(B.:許田信介)

そして、8月22日には、ファンより収録して欲しい楽曲を集い、その上位曲を含む2枚組全30曲からなる、彼ら初のベスト盤にしてセルフカバーアルバム『STORY~HY BEST~』もリリース。

初期の作品からの楽曲が若干多いながらも、ほぼ全アルバムの中から彼らの代表曲や人気曲たちが収まった同作。奇しくもHYのライブにおける人気曲や定番曲、鉄板曲ばかりが選ばれながらも、意外な曲やIZUのソロ曲であった「Fortune」も収録。まさに彼らのべストオブベストな内容となっている。

それらをあえて歴史を辿るかのように時系列的に曲たちが並ぶ今作。そこからは彼らの歴史や流れ、変貌や遍歴が辿れるだけでなく、考え方や伝え方の変化も伺えて興味深い。しかし、私が最も気になったのは、そのセルフカバーの方法論であった。20年前の曲がありながらも、あえてそれらを忠実に、聴き手の想い出や思い入れを裏切ることなく、むしろ愛着やリスペクトを持って再演されているところに聴き手への愛情を感じたのだ。結果、同じアレンジながら、そこには、そこはかとないバンドの成長や表現力のアップ、中でも歌表現の成長具合は耳を惹くものがあった。得てして、このようなセルフカバーものだと、時を経た分、成長具合や変化、今の解釈等もブレンドさせたくなり、ついつい変貌させてしまいがちなのだが、彼らの場合はあえて当時をそのまま踏襲。オリジナル・バージョンでの初期衝動性を保ったまま、現在の彼らならではの表現力や深みの増加も味合わせてくれる。

ずっとやってきてるから、どうしても変えたくなるんですよね。そこをグッと堪えました。ライブで歌ってきたり、自分の中でのその楽曲のイメージがキチンとあるので、それに基づき自然に歌っただけでした。(Key/Vo:仲宗根泉)

最初は試しにガラッと変えてみたりもしたんです。でも、不変的なものとして残っていくので、あえて原曲に愛着を持った形のみのリメイクに止めました。きっと、原曲に想い出や思い入れを持っている人たちも多いと思うので、その人たちの気持ちも壊したくなかったし。あと、難しかったのは、当時の楽曲に込めた想いの再現で。特に初期の曲は今では衝動性も薄れてますからね。そこをあえて当時の気持ちに近づけて歌ったり演奏したのは大変でした。(Dr:名嘉俊)

初めてHYを知る方には最良の入門書でもあるし。20周年に向けての助走でもあるので是非ここから聴いてもらいたいですね。この5人でやってきた18年のドラマやストーリーを是非この機会に触れてもらいたいです。(Vo/Gt:新里英之)

20周年に向けて、さらにはオリジナルアルバムの発売も視野に入れているというHY。今後も各種夏フェスや全国各地で<発売記念ミニライブ&サイン会>と題されたイベントを開催。また今年9月22日(土)を皮切りに来年まで続く、全国ツアー<2018-2019全国ツアー HY STORY TOUR ~うさがみそーれ めんそーれ そーれそれそれ ゆくいみそーれ~>と走り続ける。

みんなや自分たちが選んできたものが間違いじゃなかった。そんなツアーをしていったり、作品を残し続けていきます。20周年に向けて、いや、それ以降も走り続けていくので楽しみにして下さい。(Dr:名嘉俊)

そう、彼らの歌の数々は、これからも我々の気持ちに寄り添い、想いを重ね、愛しい人たちの顔を次々に思い浮かばせてくれるのだろう。さぁ、これからもこの作品群と共に彼らと共に歩んでいくことにしよう。

POPLETA『CHANPURU STORY ~HY tribute~』抜粋プレイリスト

『STORY~HY BEST~』

 

text by 池田スカオ