死後くんが選ぶ 死んだ後も観たい映画①『ゴースト ニューヨークの幻』
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「好きな映画」について考えてみると、不思議なことにそのときの気分やシチュエーション、タイミングによって、選ぶものが変わることに気づいた。どんな場面設定なのかによって、「語りたい映画」は変わるのだ。

しかし、そんな場面設定は「生きている」ことを前提として決められることが多いように思う。だったら、「死んだ後」だったらどうだろう。

無類の映画好きとして知られるイラストレーター・漫画家の死後くんに、「死んだ後も観たい映画」を4本選んでもらった。全4回でお送りする第1回は、『ゴースト ニューヨークの幻』。


『ゴースト ニューヨークの幻』というタイトルを聞いて思い浮かべるのは、甘ったるいラブソングが流れる部屋で女と男が二人羽織みたいになってエロティックにろくろを回すシーン(通称エロクロシーン)、という人は少なからずいると思います。自分も本作に関しての印象は、そのエロクロシーンと、あとはウーピー・ゴールドバーク扮する霊媒師のおばちゃんがなんか面白かったなー程度のものでした。しかし今回改めて本作をちゃんと観返してみたところ、こんなスリリングで熱い展開の内容だったのかと驚いております(あとウーピー・ゴールドバーグが記憶していたよりずっと若々しいので、調べたら『ゴースト〜』時は35歳くらいで今の自分より年下じゃんかと驚いております)。

『ゴースト ニューヨークの幻』

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で、改めて観直したこの映画の何が良かったかというと、殺されて霊になってしまった主人公サムが、恋人モリーに迫る危機から守るため、霊なりに努力するところです。とにかく霊になりたてのサムは不憫にも何もできません。姿を見せることも、声も届けることもできません。文字通り見守るだけです。霊なのに移動が基本徒歩ってのも切ない。空を飛んだり、行きたい場所にふっと移動したりできないのかよって思います。いちおう霊体なので、壁や人は通り抜けたり出来るのですが、霊初心者の彼はそれすらもビビってしまう。しかしそれではモリーを危機から守ることができないので、努力や工夫で少しづつ霊として成長していくのです。特に興奮したのは、サムが地下鉄を縄張りとする怖い先輩の霊のところへ赴き修行する場面です。先輩霊の恐怖指導のもとサムはついに念力で物を動かしたり掴んだり出来るようになるのです。少年ジャンプの格闘マンガや初期ジャッキー・チェン映画の修行シーンが好きな人は熱くなれること間違いない展開。なんなら僕はあのエロクロシーンを削ってでもこの修行シーンを増やして欲しいくらいに思いました。本作は、霊になっても努力すれば成長できるんだということを教えてくれる「ゴースト成長物語」であります。

蛇足ですが、この『ゴースト ニューヨークの幻』が日本でリメイクされたのをご存知でしょうか。『ゴースト もういちど抱きしめたい』というタイトルで2010年に劇場公開されてまして、主役の男女を韓国俳優のソン・スホンと松嶋菜々子が演じてます。おそらく韓流ドラマっぽいのを狙って作ったんじゃないでしょうか。僕はなぜかこの映画を劇場に観に行ってます。で、内容ははたしか松嶋菜々子のほうが死んじゃう設定で、あとは全体的にぼんやりとした記憶です。ただ、ウーピー・ゴールドバークが演じていた霊媒師をあの樹木希林さんが演じてまして、この樹木さんの演技がとにかくヤバかったという印象があります。演じているというよりは映画をぶっ壊しに行っているようなそんな感じでした。ウィキべディなんちゃらを読むと、監督さんはこの映画が劇場映画デビューとなっているのでもしかしたら、あの怪女優をうまくコントロールできなかったのかもしれません。自分がもし霊媒師だったら、樹木希林さんを降霊して「あの映画、ぶっ壊そうとしてましたよね?」と聞いてみたいです(あ、自分があの世に逝ったら聞きに行けばいいのか)。

『ゴースト もういちど抱きしめたい』
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プロフィール

死後くん
イラストレーター/1977年愛知県出身東京在住。蟹座。
雑誌POPEYE連載漫画『ジョン&ポール』(マガジンハウス)、NHK総合『おやすみ日本』の「眠いい昔話」コーナー、河出書房新社「ごきげん文藝シリーズ」装画、『失敗図鑑』(大野正人著/文響社)、絵本『ごろうのおみせ』(ごろう作/岩崎書店)他、紙媒体を初め、TV、Web等、様々な媒体で活躍。玄光社より漫画『I My モコちゃん』出版。「ペンネームが縁起が悪い」との理由で仕事が決まらないこと多々あり。

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