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映画『新聞記者』シム・ウンギョン×松坂桃李×藤井道人監督インタビュー「自分で判断できる目を持つことが大切」
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サニー 永遠の仲間たち』や『怪しい彼女』で知られる韓国のトップ女優、シム・ウンギョンさんと、『孤狼の血』で第42回日本アカデミー賞・最優秀助演男優賞を受賞した松坂桃李さんがW主演を務める、映画『新聞記者』。

望月衣塑子さんの「新聞記者」が原案の本作は、政府の闇に迫る女性新聞記者と、理想と現実に葛藤するエリート官僚との対峙を描いた、完全オリジナルストーリーの政治エンタテインメントです。

今回goo POPLETAでは、新聞記者の吉岡エリカを演じたシム・ウンギョンさんと、内閣情報調査室に勤めるエリート官僚の杉原拓海を演じた松坂桃李さん、そして本作のメガホンをとった藤井道人監督にインタビュー。

役柄への想いや演出のこだわりなど、本作についてお話を伺いました。
 

松坂さん「この作品をやる意義がある」と感じた

――本作の脚本を読まれたときの感想を教えてください。

松坂:大量の情報を取り入れやすい現在の環境の中で、それを見定める目を持ち、どう思うか、どう考えるかを改めて考えさせられる作品だなと思いました。だからこそ、お話をいただいたときには、「この作品をやる意義がある」と感じました。あと、藤井監督とご一緒できるのも大きかったです。

シム:情報が溢れるこの世の中で、私たちは何を信じたらいいのか、真実は何なのかというメッセージを投げかける映画だなと思いました。私は今回、吉岡エリカという役を演じるにあたって『スポットライト 世紀のスクープ』という大好きな映画を参考にしました。ジャーナリズムの映画ではあるものの、人間的な部分がしっかり描かれている映画ですし、世界的に起こっているかもしれない話だと感じたので共感できました。
 

©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

――エリート官僚を演じられた松坂さんは、実際に演じられていかがでしたか?

松坂:ここまで感情が揺れ動くような人だとは思っていなかったですね。そして何より、“内閣情報調査室”というものが厚いベールに包まれているので、明確にどんなことをしている機関であり、そこで働く方たちがどんな暮らしをしているのか、調べれば調べるほど分からなくて難しいことだらけでした。なので、何かを参考にするのではなく、台本の中で起こっている出来事に対して杉原が感じた気持ちや考え方を大事にしようと思いました。

――杉原に感情移入した部分はどこでしたか?

松坂:職業は違っても、組織の中で働いていることや、上からの指令に対して自分が疑問を思いつつも遂行しなければいけない葛藤、でもそれによって家族が守られているという事実もあることなど、感情移入する部分は多かったです。特に、「本当はこれが正しいのではないか」と正義に対して感情が揺れ様には強く共感しました。難しいと同時に感情移入する部分は多くある役柄でした。
 
――シムさんは、真実を追い求める吉岡を演じるにあたり、どのようなことを意識されましたか?

シム:この映画は彼女が記者になるまでのヒストリーから始まるわけではないので、撮影前には吉岡のベースを自分の中に作らないといけないと思い、色々なことを考え悩みました。吉岡は日本人の父と韓国人の母の間に生まれたハーフだったり、アメリカで育った帰国子女だったりと、しっかり設定がある、アイデンティティが強いキャラクターなので、そのことが映画のストーリーの流れで自然に見えるよう意識して演じました。
 

©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

――シムさんから見た吉岡エリカはどんな人物でしょうか。

シム:冷静に見えるかもしれないですが、辛い記憶を抱えた、とても人間味のある人物です。その両方をバランスよく見せるために調整しながらお芝居するのは難しかったですが、逆に私自身が役に入り込み、自然に感情が出たシーンもありました。特に松坂さんとの共演シーンでは、感情がすぐに出てきましたね。
 

ラストシーンの杉原の言葉

――藤井監督が本作を撮る上で重要視したのはどんなことでしょうか?

藤井監督:僕は政治に対してアプローチできるほど知識が豊富な人間ではなかったので、オファーをいただいたとき最初はお断りしていたのですが、河村プロデュサーの熱い思いを受けて、そこからすごく勉強して脚本を直しました。直す上で意識したのは、高尚な偏差値の高いものではなく、政治に詳しくなかったり、興味がなかったりする人たちに対して「今の状況ってどう思いますか?」と問いかけること、そして映画好きの方たちにも届く映画にすることでした。

――演出する上で意識されたことは?

藤井監督:内閣情報調査室のシーンの演出、松坂さんとシムさんの共演シーンの演出、新聞社の演出には特にこだわりました。やはり難しかったのは、それぞれが何をやっているのか、そして明確な杉原の葛藤と吉岡の正義を伝えなきゃいけない内閣情報調査室と新聞社のシーンでした。緊張感もすごいし、段取りのときから完成されていて、見えない感情が渦巻いていたので、「早く撮りたい!」と思っていましたね。しかも、何回も撮っていると感情やニュアンスが変わってくるんです。受けて返してというのを繰り返していくと、どんどんエモーショナルになっていく。お二人には孤独に演じていただく必要があるシーンが多かったでしたが、お二人とも良いバランスで演じてくださいましたし、その様を楽しく見させていただきました。
 

©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

――お二人の演技によって、台本と変わってきた部分はありますか?

藤井監督:大きく変わったところは特にないですが、ラストシーンは台本と違うものになっています。見つめ合う二人のお芝居を見た松坂さんが「ここで杉原は何か言うと思うんですよね。何ですかね……」と問いかけてくれて。あのラストシーンの言葉に導いてくれたのは松坂さんなんですよね。シムさんは、記者としてのクセをすごく作ってくれました。吉岡が席に座ったら何をしているのか、どういうルーティンで仕事をしているのかを体に染み込ませてくれていて、それが全部の画に映っています。
 

本作から感じた怖さと大切なこと

©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

――対立する立場の新聞記者と内閣官僚、お互いの感情を描くのは難しかったのでないでしょうか?

藤井監督:原作では、新聞記者の正義にフォーカスがあたっていますが、それだけだとこの映画は成立しないんじゃないかと思いました。新聞記者を称賛する映画であってはいけないし、ジャーナリズムやメディアってなんなのかを現代に生きる人々に問いかけ、考え直すきかっけになる作品にしたかったんです。官僚の方にお話を伺ったとき、「記者に対しての印象操作と言われるものが仮にあるとしたら、それはカウンターなんです。攻撃されたからやり返しただけであり、僕達には僕達の正義がある」と仰っていて、それが絶対に間違っているとは思えなかったんですよね。彼らにも生活があり、彼らなりの正義もある。そこをおざなりにする作品にはしたくないと思いました。確かにお互いの感情を描くのは難しかったですが、どちらも大事に丁寧に描こうと思いました。
 
――藤井監督は本作の取材で「知らないことの怖さを感じた」と仰っていました。松坂さんとシムさんが本作を演じて感じた「怖さ」はどんなものだったでしょうか。

松坂:真実と偽りの情報が、いかに無差別に自分に入ってきやすい環境なのかを実感して怖さを感じました。これまで、今の環境に恐怖心が無かったからこそ、より強く実感しましたし、この作品はフィクションですが、もし実際に映画で描かれているようなことがあったとしたら、何が真実で何か嘘なのか、その見極めが非常に難しいと思いました。何かに対して誰かが批判したりしたとき、編集のされ方によって全く異なる内容としてメディアで取り上げられてしまったり、口コミやレビューという形で自分を含め、色々な方の言葉が載りやすい環境だからこそ、ある種、批判されないための“安心材料”の一つに繋がってきたりもするのかなと思います。でも、だからこそ自分の目で見たことや感じた思いを大事にすること、自分の考えを持つことが大切だと感じました。

シム:私には、この映画が持っているメッセージが大きな圧力でした(笑)。現代では、インターネットにたくさんの情報が集まっていますし、更新もとても早い。しかも、誰でもすぐに見ることができる状況にあります。その中で松坂さんと監督がおっしゃったように、真実の情報もあればフェイクニュースもあり、真実を嘘だと言われてしまうこともある。毎日のように複雑なことが起こっていると思うので、自分で判断できる目を持つことが大切なことだと思います。