聴く醍醐味を味わおう!サントラが最高な映画7選
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映画は究極の総合芸術と言われるが、目から受け取る、映像で攻めた作品もあれば、耳から受け取る、音楽で攻めた作品も数多くある。ミュージカルとしてではなく、映画の中でその曲が流れていたからこそ、その作品が忘れられなくなる。そんな経験ができるのも映画を見る(聴く)醍醐味である。

そこで今回は、90年代後半から2000年代前半に公開された、素敵な楽曲でいっぱいの彩り豊かな作品を7本ご紹介する。

 

「フランシスコの2人の息子」


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■あらすじ
ブラジルで国民的人気を誇る兄弟デュオ、ゼゼ・ヂ・カマルゴ&ルシアーノのサクセス・ストーリーを描いた伝記映画。
貧しくも音楽という楽しみを持ち、子どもたちにはいつかミュージシャンになってほしいと願う、頑固一徹の父・フランシスコと、それを温かく見守る母・エレナ。父は、なけなしの金で長男のミロズマルにアコーディオンを、次男のエミヴァルにはギターを買い与える。
父の稼ぎだけで、子ども7人、一家9人の家計を支えるのは厳しく、息子たちは楽器を持って路上で歌い、日銭を稼いでくるようになる。これがエージェントの目に止まり、2人はミュージシャンとしてブラジル国内を廻ることに。しかし、このツアー中に車が事故を起こし、エミヴァルが死んでしまい……。

 
■見どころ
何と言っても、主人公の兄弟を演じた子役2人の路上での初めてのパフォーマンスがとても瑞々しく美しい。金を稼ぐために始めた自分たちの音楽が多くの人を惹きつけ、「歌うことがこんなにも楽しいなんて」と喜びでいっぱいになる2人の顔つきがまた良い。
彼らの奏でる曲は、ブラジルの大衆音楽、セルタネージョというカントリーミュージックで、世界でウケるかというと何とも言い難いが、子どもたちが音楽を通して喜びを知り、大きな悲しみを乗り越えて羽ばたいていく姿とも相まって、見ごたえ(聴きごたえ)のある作品となっている。

 

 
「ブラス!」


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■あらすじ
1990年代、イギリスの小さな炭鉱の町グリムリー。この町では炭鉱夫達による伝統的バンド、「グリムリー・コリアリー・バンド」があった。ところが、炭鉱閉鎖の噂に失業を恐れた炭鉱夫達は、演奏に身が入らない。町では炭鉱存続の投票が行われるも閉鎖が決定となってしまう。メンバーの中で様々な思いが交錯するなか、全英ブラスバンド選手権で優勝することを夢見て練習してきた彼らは……。

 
■見どころ
炭鉱閉鎖で職を失ってしまう労働者たちの悲哀に満ちた姿を、ブラスバンドの演奏シーンとともに数々の有名曲で彩った本作。中でも印象的なのは、バンドの中心的存在であるダニーが病に倒れたとき、病院の中庭にバンドメンバーが集まり、炭鉱で使われるヘッドランプをつけて「ダニー・ボーイ」を演奏するシーンである。失業し、バンド演奏も諦めなければならない彼らの心情と、それでもダニーを鼓舞しようとする姿に涙せずにはいられない。

また、全英選手権当日に決勝で演奏する「ウィリアム・テル序曲」のシーンは、曲調も相まって、私たち観る者の心を奮い立たせるのである。
当時のイギリスの社会問題をとり上げた小難しいテーマながら、音楽をこよなく愛する彼らの力いっぱいの演奏によって、笑いと涙であふれる力強い作品に仕上がっている。ぜひ実際に見て、聴いて、感じてほしい。

 

 
「マグノリア」


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■あらすじ
死を目前にした大物TVプロデューサー、アール。彼の後妻・リンダに、看護人のフィル、アールの息子。クイズ番組司会者とその娘、彼女に一目惚れする警官。天才クイズ少年とその父親。ロサンゼルス、サン・フェルナンド・バレーでの、9人の男女の一日を描いた群像劇。一見関係ない彼らの人生が、不思議な糸で結ばれてゆく。

 
■見どころ
一見深い結びつきがありそうで、限りなく希薄になっている家族と、彼らを結びつけるその他の人々を描いたオムニバス映画。それぞれの一日が重なり合うことで、様々な事が明るみになり、ストーリー終盤では、想像を絶する天変地異が起こる。筆者はこの映画を見て、文字どおり呆気にとられた。そして、その何とも言えない感情を、一度聴いたら忘れられない声で彩っているのが歌手エイミー・マンの楽曲の数々である。特にラストで流れる「Save Me」は、この映画のテーマとこの映画に出てくる人々の心の声を代弁しているかのようである。

人は誰しも大なり小なり罪を犯す。それを許してもらうにはどうしたらいいのか、皆もがき苦しむ。そんな心の叫びを音楽で見事に表現しているのが、エイミー・マンの歌声なのである。この映画の監督のポール・トーマス・アンダーソンは、彼女の曲を聴いて、本作の脚本を書いたと言われる。この物語は、愛に渇望し、犯した罪に苦悶する人々がどうにもならなくなり、それらの感情がはじけ飛んでしまった1日を、見事に音楽と衝撃的映像とで表した187分という大作である。心に余裕がなくなった時にこそ、時間を作って見るべき、聴くべき作品。

 

 
「死ぬまでにしたい10のこと」


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■あらすじ
アンは23才。彼女は仕事をしながら、無職で求職中の夫・ドンを助け、妻として、また母として、何気ない日常を送っていた。ところが、ある朝、突然の腹痛に襲われ倒れてしまう。病院で余命2ヶ月の宣告を受けるアン。彼女は死ぬまでにすることをノート書き出し、それを誰にも伝えず、悔いのない人生を送ろうと決意する……。

 
■見どころ
死を宣告された若い女性が最後に願う10のこと。そのうち、7つ目と8つ目については、賛否両論あるだろう。
「夫以外の男性と付き合ってみる」、「誰かが私と恋に落ちるように誘惑する」―――。
それを実践する彼女は、それでも決して女をむき出しにしているわけではないし、情熱的でも狂信的でもない。しかし、彼女とリーとの出逢いとやりとりこそが、本作を唯一無二にしているのだろうと感じる。

アンが願いを淡々と実行していく姿は、フィクションどころかリアリティそのものだ。誰にも打ち明けることなく、でも涙を堪えながら、強さと弱さの狭間にいる彼女の心の内を表現しているのが、スペインのアーティスト、アルフォンソ・デ・ヴィラロンガの楽曲である。それらはストーリーを一切邪魔することなく、しかし、間違いなく作品に輝きを与えている。

また、ラストの挿入曲「Senza fine(恋に終わりなく)」は60年代イタリアのジーノ・パオリの曲だが、暗く悲しみに沈みがちな本作にポッと明かりを灯すかのような効果があり、この曲によって、本作の原題「私のいない、私の人生」をスッと受け入れることができるのではないだろうかと思う。

 

 
「アメリ」


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■あらすじ
空想好きで、人と関わることが苦手な女性アメリ。彼女は人を幸せにすることに喜びを覚え、多くのいたずらを仕掛けては、人の手助けをしようとする。そんなアメリが恋に落ちた。内気な彼女は想いを告げることができるのか……。

 
■見どころ
フランス映画は難しい、という偏見を見事に取り払ったインディペンデント系フランス映画の代表作とも言える本作。女子ウケ間違いなしの色使いやインテリア、ファッションはもちろんのこと、当時の日本にクレーム・ブリュレというお菓子を流行させたとも言われるシーンは必見。ともすれば不思議ちゃんでしかない彼女を見て、私たちは少し戸惑う。しかし自分の殻を破って、新しい世界に踏み出そうとする彼女の姿は、観る者に勇気を与え、いつの間にか、私たちは彼女の姿に自身を投影しながら展開を追うだろう。

恋愛大国フランスにも、こんなに控えめで、人との距離感が掴めない人々がいるのだと思わせてくれる。そんな本作の全編を彩るのが、ヤン・ティルセンの楽曲である。一度耳にしたら忘れることのできない彼のメロディがあってこそ、本作は成り立っているといっても過言ではない。音楽で、「カワイイ」は表現できるのだと実感させられる。

 

 
「メトロで恋して」


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■あらすじ
売れない俳優アントワーヌと、TGVのウェイトレスとして働くクララは、パリのメトロで偶然に出会って惹かれ合う。しかし、クララがエイズに侵されていることが発覚。アントワーヌはその事実が受け入れられず、2人の間には距離ができてしまい……。

 
■見どころ
男女の恋の障壁が、相手の不治の病という為す術のない展開は、よくあることなのかもしれない。そんなラブストーリーを特別にするのは、まず、出会いがメトロだったということ、パリの数々の名所が映し出され、誰もが憧れのパリにいるかのような気分になれることだろうか。あんな出会い方が実際あるのだとしたら、人生捨てたものじゃないなと思わせられる。

2人が初めて待ち合わせをするオデオン、セーヌ河岸、リュクサンブール公園、モンパルナス界隈……。
そして、何といってもフレンチ・ポップスの雄、バンジャマン・ビオレの楽曲が本作に深みをもたらしている。最初の出会いから恋の成熟期までの高揚感は明るくポップな感じ。クララの病がわかってから、悲しみに暮れる2人の様子、特にアントワーヌの苦悩するシーンは暗い色調までも表すかのように、叙情豊かに表現されている。中でも特に印象的なのは、アントワーヌとクララが歌い踊るセーヌ河岸でのシーンだろう。いきなりミュージカル調になるのには虚を突かれるのだが、2人が少し恥ずかしそうに発する声は、こちらがこそばゆくなるほど初々しく表現されている。

愛する人のすべてを知り、受け入れられるかどうか。そんな問いを本作は投げかける。観客に結末をゆだねる曖昧なエンディングは賛否両論あるが、誰もが一度は味わったことのある恋愛の楽しさ、そして難しさをストレートに描いたフランス映画であり、そこに難解さは一切ない。そんな普遍的な物語である。

 

 
「オーケストラ!」


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■あらすじ
時は1980年。ロシア・ボリショイ交響楽団の劇場清掃員として働く元主席指揮者アンドレイ。当時の政府はユダヤ人排斥を謳い、ボリショイ交響楽団からも多くのユダヤ人が連行され、それに反対したロシア人たちも解雇を余儀なくされた。復帰を夢見るアンドレイが、ひょんなことから、ボリショイ交響楽団の代表と偽り、パリのシャトレ座にかつての仲間とともに乗り込むことになり……。

 
■見どころ
数々の有名なクラシック音楽で彩られる本作の最大の見どころ(聴きどころ)は、クライマックスでのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の演奏シーンである。この曲は映画用にアレンジされており、いくつかの小節を省き12分でまとめられている。それに憤慨したクラシックファンもいると聞いたが、物語の展開を追いながらこのシーンを見れば、その圧倒的なパワーに涙せずにはいられないだろう。

社会の底辺に落とされた人々がかつての輝きを取り戻し、堂々と素晴らしいハーモニーを奏でるまでの過程は、ハチャメチャだが笑うに笑えない。当時のロシア(ソビエト連邦)の政治的背景を織り交ぜながらも、あくまでコメディタッチを貫いた本作は、とてもわかりやすく、主人公のアンドレイに感情移入しながら見ることができる。

また、バラバラの寄せ集め集団だった彼らをつなぎとめる役割を担うのが、メラニー・ロラン扮するアンヌ・マリーという存在だ。彼女は偽ボリショイ交響楽団員たちの希望の星でもある。クラシックは固い、難しいという固定観念を捨てたい方にぜひご覧いただきたい作品。

 

 

■まとめ

内容的には全く共通点のない7本ではあるが、筆者が若かりし頃に見たものばかりで、それらを構成する音楽はどれも公開から10~19年経った今も、耳から離れることはない。

ミュージカルをメインにした作品ではなくても、劇中で流れる音楽はストーリーに深みを与え、忘れがたいものにさせてくれる。これからもそんな作品に多く出会えることを願ってやまない。

 

text by つぶまる