目を背けたい……でも知るべき。タブーに切り込んだ韓国の【R18】映画3選
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R18指定というと、どんな作品を思い浮かべるだろうか。
“オトナの映画”、アダルト系、暴力または麻薬、難しい、とっつきにくい……。

R18指定作品は地上波での放映もないため、なかなか気軽に目にすることはない。けれど、そこには私たちが知るべき事実が少なからず含まれていることがある。

今回は、お隣の国・韓国発、アダルト系ではないR18指定映画3作品をご紹介する。どれも、社会問題や目をそらされがちなタブーに切り込んだ意欲作だ。

 

「トガニ 幼き瞳の告発」


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■あらすじ
韓国は光州の聴覚障害学校の教師たちが、2000年から約6年にわたり、入所児童らに性的虐待や暴行を加え、それを施設・地域ぐるみで隠ぺいしていたという事実をとりあげた衝撃作。その学校に赴任した一人の新任美術教師が、おぞましい状況を目の当たりにし、何とかせねばと奮起する様が前半で描かれ、後半では、法廷で学校・教師らを裁く様が描かれる。

 
■見どころ
終始歯を食いしばって見ないといけない。虐待のシーンは、子どもたちの声なき叫びが、私たち観客の耳をつんざくかのようである。本来なら子どもたちを守るべき大人が、こぞって保身に走る姿をこれでもかと見せつけられるのも辛い。暴力、汚職に買収。何でもありだ。裁判でも、子どもたちの証言はまともに扱ってもらえない。そのやりきれなさは耐えがたい。

この映画の最大の評価ポイントは、作品をきっかけに世論が動き、法改正がなされたという点である。この映画を観た韓国国民は動いた。当時不起訴となった加害者らは、再逮捕、起訴され、求刑よりも厳罰に処された。また、この映画をきっかけに“トガニ法”なる障害のある女性や児童への性的虐待を厳罰に処する法も制定されることになった。中途半端なシーンは一切なく、惨たらしい状況を映像化したことで、人々の心は大いに揺り動かされたのだ。
程度の差はあれ、世界中のどんな国でも起こっている、起こり得る事件をとりあげ、世論を動かした意欲作である。

 

 
「メビウス」


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■あらすじ
韓国のとある上流家庭。夫の不倫に嫉妬した妻は、激情に駆られ、夫の性器を切り落とそうとするが失敗。彼女は自分の息子に矛先を変え、息子はこともあろうに性器を実の母に奪われてしまう。
その後、妻は夫と息子を残して失踪。息子への罪悪感に苦しむ父は、ある方法で解決策を見出し、息子と新たな関係を築いていこうとするが、そこへ行方をくらましていた妻が帰ってきて……。

 
■見どころ
全編セリフなし。泣く、叫ぶ、の感情表現だけで表される。そのため、不可解なシーンがないわけではないが、監督が描きたかったことは全てぶつけられたかのようなパワーのある作品。
しかし人間とは、あんなに性欲だけに突き動かされるものなのだろうか。男も女も、父も母も息子も、この映画の中では、彼らの行動の起点は何よりもセックスなのである。夫を愛するがあまりに、彼の性器を切り落とそうとする妻。父の代わりに性器を切り落とされた息子は、父の不倫相手に近づき、最終的には肉体関係を持つ。不倫相手の女もそれを受け容れる。もはや愛なんて言葉は一旦すべてかき消されるのだが、それと同時に、そこはかとない愛も感じられる。

息子が父の不倫相手の女に向ける、大人の女性への憧れともとれるまなざし。性器を失った息子のために、自慰の仕方を調べ教えたり、性器移植まで試みる父。性欲の連鎖(メビウス)をつなぐのは、純粋な恋心や子どもに対する深い愛情なのではないだろうか。

ある意味、狂っているとしか言いようがない、説明しようがない情欲を描き切った問題作である。昭和の混沌とした時代、日本でも似たような事件があったし、このようなあぶらぎった作品が多く作られていた。良くも悪くも時代が変わり、このような作品制作は韓国に座を譲ることになったのではないだろうか……。

 

 
「殺されたミンジュ」


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■あらすじ
5月9日夜。ソウル市内の市場で、女子高生ミンジュが複数の男たちにビニールテープでぐるぐる巻きにされ、殺害された。しかし事件はなぜか闇に葬り去られてしまう。
それから1年後、事件に関わった7人の容疑者のうちの1人、オ・ヒョンが、謎の武装集団に拉致される。その後、武装集団は残りの容疑者たちをそれぞれ拉致、拷問して自白を強要。容疑者たちの証言により、事件の闇が明るみになっていき…。

 
■見どころ
国家という強大な権力を前にして、人は思考能力を滅し、「指示されたからやった」と平気でのたまう。そんな組織の闇を見せつけられる本作。
その闇を暴力で暴いていくのが、世の中の不条理さに嫌気がさした“負け組”の集まりである武装集団だ。その実は、強い信念を持つ正義の味方であるどころか、簡単に権力へ寝返り、所詮は寄せ集めという結束力の弱さを露呈させ、そのリアリティのある人間の弱さの描写が、本作の最大の見どころと言えるだろう。

この映画では何度も「上の指示に従った」「責任者は誰だ?」という言葉が出てくる。韓国社会が、どれくらい縦割りのトップダウンの組織で成り立っているのか。指示を出すだけで直接手を下すことのなかったボスは、部下を無能扱いし、簡単に切り捨てようとする。そんな国家の闇に切り込んだ勇気も、この作品の評価に寄与している。

ラスト、巨大な権力に対する無力感を思い知った武装集団のリーダーが慟哭するシーンが印象的だ。彼は武装集団の中でただ一人、ミンジュを殺した奴らを裁く明確な理由があった。そして、それを知りながらも、その彼をぶった切りにし、復讐の炎に燃え尽きたオ・ヒョンの姿を見て、わたしたちは思う。何も変わらない。暴力は暴力を呼び起こし、負の連鎖となるのだと。

 

 

■まとめ

それぞれ製作年や扱うテーマも異なるが、どれも圧倒的なパワーがあり、観客は何かを思い煩い、考えさせられる。

ときに世論や法をも動かす、韓国の衝撃作たち。これらを「R18指定だから」とノータッチのままでいるのは本当にもったいない。隣国ではこんな映画が作られているのだということを、ぜひ知ってほしい。

 

text by つぶまる