連休から現実に戻って絶望しているあなたに贈る映画3選
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今年のゴールデンウイークは10連休だったこともあり、旅行や行楽に行かれた人も多かったと思う。また、平成が終わり、令和という新しい時代がはじまる記念すべきタイミングでもあった。しかし、そんなエキサイティングな楽しい時間というものは、いつかは終わりを告げるもの。学校や仕事という現実に直面して、絶望している人もいるのではないだろうか。そこで今回は、弁護士であり映画評論家でもある坂和総合法律事務所の所長、坂和章平さんに戻された現実社会にギャップを感じているあなたに贈る映画を3つ選んでもらった。
 

『キングダム』


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最初に紹介してもらったのは、今年の邦画最大の話題作といえる『キングダム』だ。

「『キングダム』は、原作がコミックだからと侮ってはいけない作品です。壮大な歴史モノの面白さと主人公たちの個性。そして、大スペクタクルの迫力とロケ地の壮大さにも注目して欲しい作品となっています」(坂和さん)

熱烈なコミックファンも多いタイトルだ。

「現在まで刊行された原泰久の『キングダム』54巻は、中国の春秋戦国時代を舞台に、大将軍になるという夢を抱く戦災孤児の少年・信と、中華統一を目指す若き王・嬴政(えいせい)を壮大なスケールで描くもの。すると、それを実写映画化すれば、『始皇帝暗殺』(98年)、『HERO(英雄)』(02年)や、かつて勝新太郎が主演した70ミリの超大作『秦・始皇帝』(62年)にも並ぶエンタメ超大作になることも想像に難くありません。しかし、今作は、原作の1~5巻までをまとめた作品となっています。『本作の本筋とクライマックスは?』ということで、そのような仕上がりになっているか気になるところでしょう」(坂和さん)

確かに、「キングダム全巻を実写化したら」と考えると、壮大な歴史作品になりそうだ。

「まずは、影武者、替え玉、双子の“仕掛け”に、なるほど、なるほど! また、異母兄弟による兄弟の確執と対立にも、なるほど、なるほど! といった具合に、見どころが満載。嬴政と“山の民”との同盟はいかにも漫画チックではありますが、全編を通してキーマンになるのは、いかにも一匹狼的で謎めいた王騎将軍。本作で兄弟ゲンカのケリはつきますが、『この国のかたちは?』と問う王騎に対する嬴政の答えは……。以降のシリーズでは、始皇帝暗殺に至るまでの、秦王・嬴政の前向きの国づくりの実態を、ぜひしっかり見せてもらいたいものです」(坂和さん)

否が応でも、続編を期待せずにはいられない作品だろう。
 

『空母いぶき』

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次は、令和という時代になった今だからこそ、見ておきたい作品だ。

「『空母いぶき』も原作はコミックですが、こちらも侮れません。護衛艦『いずも』の空母改修問題は、『防衛計画の大綱・中期防衛力整備計画』の中でも盛んに議論されたテーマですが、その論点とは? また、2015年5月に成立した『平和安全法制』では、何がどう整備されたのか? そして、 “専守防衛”一辺倒だった自衛隊が“防衛出動”できるギリギリの状況とは……。それらをしっかり勉強しながら、20XX年のクリスマスに起きる東亜連邦による波留間群島の初島占領と、それに向けた空母いぶきを旗艦とする第5護衛隊群の動きをしっかり確認しておきたいところです」(坂和さん)

こちらの作品も、原作がコミックとは思えないほど骨太な内容といえよう。

「もちろん、自衛隊を動かすのは官邸です。そこでは軍事以上に外交が大切ですが、総理は米国や国連にいかなる働きかけをするのか。そして国連は、本当に機能しているのかと、きっと問いかけたくなることでしょう。戦争に縁のなかった平成の30年間が終わり、令和元年を迎えた今、本作を契機に平和安全法制をしっかり勉強し、憲法改正の是非やそのあり方について、しっかり自分の意見を持ってもらいたいものですね」(坂和さん)

新しい時代を生き抜くためにも、我々全員が平和というものを今一度問いただす必要があるのかもしれない。
 

『ビリーブ 未来への大逆転』


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最後は、見た人が元気になる弁護士・法定モノの作品を紹介してもらった。

「『ビリーブ 未来への大逆転』は、原題でも邦題でも、正直何の映画か分かりづらいのですが、れっきとした弁護士・法廷モノの作品です。若き日の1970年当時は、女性差別と闘う女弁護士であり、85歳の今はアメリカ女性最高裁判事というルース・ギンズバーグの活躍に注目してください! アメリカでは“RBG”の愛称で知られ、スーパーヒーローのような存在で、彼女がデザインされたグッズが街中に売られるなど、アイコン化されています。ドキュメンタリー版も近々公開されるそうですが、若き日の彼女を描いた本作の方が圧倒的に面白い作品といえるでしょう。『彼女はなぜこんな裁判に全力を?』これを観れば、元気が出ることまちがいなしです」(坂和さん)

ルースのようなパワフルなシニアが増えれば、少子高齢化の未来も明るくなることだろう。

「500人中女性は9名。それが1956年当時のハーバード大学法科大学院の“実態”だったそうで、いくら優秀でも女性の立場は厳しかったと想像できます。『女だから』というだけで、弁護士になることすらままならなかったようです。しかし、『なぜ“専業主夫”は許されないの?』そんな訴訟と巡り会い、世の偏見と闘いはじめると……。チャーチルやJFKの演説はもちろん、『チャップリンの独裁者』(40年)の演説も心に残るもの。しかし、本作ラストに見る、ルースの5分32秒の弁論も必見です」(坂和さん)

特に、法曹を目指す若者には、ルースの闘う姿と弁論を目の当たりにすることで、理想の弁護士像を固めていって欲しいと坂和さんは語る。

10連休から、いきなり学校や仕事に社会復帰するのは、誰にとってもしんどいもの。しかし、今回紹介してもらった作品は、どれも新しい時代を生きる我々の背中を押してくれる、力強い作品ばかりである。ぜひ作品を見てもらい、新年号から心機一転、頑張ってもらえれば幸いだ。
 

●専門家プロフィール:坂和 章平(さかわ しょうへい) 
坂和総合法律事務所の所長。弁護士として活躍だけでなく、映画評論家との2足のわらじを履く経歴を持つ。著書に、『実況中継 まちづくりの法と政策』(日本評論社)、SHOW-HEYシネマルーム1~41』など多数。

text by ラチーコ