技術力の高さに驚嘆する! 丁寧に紡がれた“ストップモーションアニメ”作品4選
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さまざまなテクノロジーの進化によって、映像の世界は広がりを増した。映画もアニメも、ビックリするほど美しい作品が世に溢れている。しかし、たまには「すごい映像技術!」をひと休みして、時間をかけて丁寧に紡がれたストップモーションアニメも堪能してみてほしい。

私は、幼い頃にNHKで放送されていたストップモーションアニメ『ニャッキ!』が好きだった。人形やセットを1コマずつ動かして撮影する、アニメとも実写とも違うストップモーションアニメの味わいと、少し毒気があるストーリーが、今でも心に残っている。

「こういう作品をもっと知りたい!」と思い、ようやく見つけたお気に入りの4作品を、ここでみなさんに共有させてほしい。

 

ティム・バートンのコープスブライド(2005年)


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ドジなビクターは、ビクトリアとの結婚式のリハーサルで失敗を連発してしまう。ビクターは「これでは本番を迎えられない」と、森の中で1人、練習のために結婚指輪を枯れ枝にはめてみた。しかし、枯れ枝だと思っていたものは、地中で花婿を待つ“コープス ブライド”のエミリーの指だった。意図せず誓いを立ててしまったビクターは、死者の世界に引きずり込まれるものの、そこは陰鬱とは無縁のハッピーな場所だった。「息苦しい現実よりこっちのほうが……」と思ったビクターは、徐々にエミリーに惹かれていく。

 
「ストップモーションアニメ」と聞いて思い浮かぶのは、やはりティム・バートン作品ではなかろうか。少し毒々しい雰囲気を持つキャラクターやモチーフに、大人も子どもも虜になってしまう、不思議な魅力がある。

映像は終始、ダークでスモーキーな色彩で進んでいく。死者であるエミリーは「腐り落ちた目から虫が出てくる」なんてひどい描写があるにもかかわらず、とってもキュートだ。それぞれのキャラクターは人間味に溢れていて、ビクターとエミリーとビクトリアの三角関係も、誰を応援すればいいのかわからなくなってしまうほど、どの人物も憎めない。

映画としては少し短めの76分だけれど、満足感たっぷりの充実した時間を過ごせるので、ストップモーションアニメをあまり観ないという人にも、おすすめしたい。

 

 
コララインとボタンの魔女(2009年)


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コララインは、忙しい両親に構ってもらえず、常に不満を抱えていた。そんなある日、家の中に小さなドアを見つけて入ってみると、優しくてなんでも願いをかなえてくれる“別の両親”が迎えてくれた。見た目は両親にソックリだが、なぜか目がボタンでできている。奇妙に思いながらも“別の両親”との生活を楽しんでいたコララインだが、「あなたもボタンの目になるのよ」と“別の両親”に迫られて……。

 
『コララインとボタンの魔女』は、アメリカで「アニメ界のアカデミー賞」と言われる「アニー賞」最優秀美術賞を受賞した。全キャラクターが独特かつ魅力的で、観終わってからもどんなキャラクターが登場したか、すぐに答えられる。コンセプトアートは日本人イラストレーター・上杉忠弘が担当しており、日本的なモチーフが盛り込まれているのも、嬉しいポイントだ。

構想5年、撮影期間4年をかけたという本作は、登場人物それぞれに、多数の表情パーツが用意されて撮影された。主人公であるコララインの表情は、なんと20万7336通り! シーンによっては、35秒間に16の表情の変化があったという。約1分の映像を1週間かけて作り込まなければならないという、考えただけで気が遠くなるような制作作業だ。

物語は、機械の手によって古い人形がほどかれて、新しい人形に作り直されるところからはじまる。このシーンだけでも、CGにはない手作り感や、心地よいチープさがあり、細部まで作り込まれていることがよくわかるので、ただのオープニングと思わずにじっくり観てほしい。いや、こんなことを書かなくてもくぎ付けになってしまうに違いない。

パッケージを見て「子ども向けか」と敬遠してしまうのはもったいない。実は恐ろしい描写が多く、ホラー作品のようだった。クライマックスは、大人が観ても「ヒーッ」と声をあげたくなる仕上がりだ。子どもの“トラウマ作品”になりかねないので注意して。

また、監督のヘンリー・セリックは、大人気ストップモーションアニメ『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』も手がけており、料理のシーンでは割れた卵からジャック・スケリントンが顔をのぞかせるという遊び心が観られる。

 

 
KUBO/クボ 二本の弦の秘密(2017年)


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片目の少年・クボは、三味線を奏でて折り紙を操る不思議な力を持っている。ある日、体の弱い母と2人で暮らしていたクボの前に突如、母の妹2人が現れ、クボの残りの目を狙って襲いかかる。母はクボを守って息絶えてしまい、「刀、鎧、兜を探せ」という遺言を残す。悲しみながらもクボは、サルとクワガタを味方にして旅を始め、その過程で母の過去や父と祖父の存在を知っていく……。

 
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』は、中世の日本を舞台にしており、『コララインとボタンの魔女』を手がけたアニメーションスタジオ・ライカが制作した。「アカデミー賞」の長編アニメーション部門、視覚効果部門にノミネートされたほか、「アニー賞」「ゴールデングローブ賞」「英国アカデミー賞」など、計27の賞を受賞し、83部門にノミネートされた注目作品だ。間違いなく、ストップモーションアニメを語る上で欠かせない作品になった。

ストーリーは、RPGゲームやおとぎ話『桃太郎』『竹取物語』のような、日本人に馴染みのある王道ストーリーだ。古く趣深い日本の風景や人物、小物、繊細な描写、作り込まれたシーンのすべてが、ストップモーションアニメ作品の中でも群を抜いている。それもそのはず、クボの表情の数はコララインの約230倍の4,800万通りが用意され、1週間で制作できるのは平均3.31秒だったという。これだけ手間暇かけて、あの繊細な映像が私たちのもとに届けられたのかと思うと、感動もひとしおだ。

監督は、黒澤 明や宮崎 駿を敬愛する大の日本マニアであるトラヴィス・ナイト。彼は、2019年3月22日(金)公開の『トランスフォーマー』シリーズ最新作『バンブルビー』の監督もしている大注目の人物だ。

また、葛飾北斎や斎藤 清をはじめとする、古典的な芸術や版画にインスパイアされた絵柄になっていて、クボの父は『七人の侍』に出演している三船敏郎に似せて作られた。日本への敬意が随所に表れていて、日本人でも知らない日本の魅力がたっぷり詰め込まれている。間違っても「外国人が作った日本なんてスシ・ゲイシャ・フジヤマでしょ?」なんて、古い考えでは観られない、全日本人必見と言っても過言ではない素晴らしい作品だ。

 

 
犬ヶ島(2018年)


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“ドッグ病”が大流行するメガ崎市の小林市長は、人間への感染を防ぐために、すべての犬を「犬ヶ島」へ追放することを決定する。愛犬・スポッツを追放されてしまった12歳の少年・アタリは、スポッツを救うため、小型飛行機に乗り込み、「犬ヶ島」へと向かった。アタリは、島で生活していた5匹の犬とともにスポッツを探すが、その過程で大人たちの陰謀へと近づいていく……。

 
近未来の日本が舞台であり、声優には渡辺 謙、夏木マリ、野田洋次郎(RADWIMPS)など、豪華キャストが起用された。これは吹き替えではなくオリジナルの声優で、英語と日本語が入り混じった仕上がりになっている。本作は、「ベルリン国際映画祭」銀熊賞を受賞し、「アニー賞」4部門、「ゴールデングローブ賞」2部門にノミネートされたお墨付き作品だ。

監督は同じくストップモーションアニメ『ファンタスティックMr.FOX』や、映画『グランド・ブダペスト・ホテル』を手がけたウェス・アンダーソン。彼もまた、黒澤作品や宮崎作品にインスパイアされたと語っている。

構想から6年をかけて完成させただけあって、犬たちのフワフワした毛並みや人間たちの動きは素晴らしい。14万4000枚もの写真を使い、445日かけて撮影、動員したスタッフは総勢670人という驚きの規模だ。

また、本作は犬がかわいいだけのストーリーではない。野良犬の生活ぶり、簡単に犬を捨ててしまう人間の残酷さ、それでも人間に愛されていた頃を覚えている犬の健気さなど、複雑な内容も多数込められており、アニメではあるものの、対象はどっぷりと大人向けであると感じた。

 

 

独特の質感が味わい深い作品たち

ストップモーションアニメは、長い年月と多大な労力を背負って届けられる。

未鑑賞の方は、この機会にぜひ観てみてほしい。年代順に観れば、ストップモーションアニメの技術の進化にも、ビックリするかもしれない。

 

text by 春夏冬つかさ