黒人差別・奴隷制度の時代を知る、胸がえぐられる号泣映画4選
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黒人差別の歴史は1700年頃から始まった。黒人は奴隷として扱われ、人間としてではなく労働力として見られていた。そんな辛く、悲しい時代を映画で知って、改めて人種差別について考えてみてほしい。今回は、人種差別をテーマにした映画の中でもメッセージ性が強い4作品を紹介する。

『カラーパープル』(1985年)


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■あらすじ
1909年、南部ジョージアの小さな町のはずれに住む黒人一家の少女セリーは、二人の子供を出産する。その後、ミスターと呼ばれる横暴な男のもとに嫁いだセリーには、召使い並みの扱いを受ける辛い日々が待っていた。心の支えだった妹のネティも消息を断ち、セリーの苦悩は深まるばかり。そんなある日、ブルース歌手のジャグが訪れる。

 
主人公のセリーを中心に、黒人女性が同じ黒人の男や白人に虐げられ、人間としての扱いを受けてこなかった事実を「とにかく知ってほしい」と、伝えてくる。その状況が痛いくらいに胸に突き刺さり、息もできなくなるほど涙が溢れ出す。黒人女性たちが伝えたいことは「私はここにいる」「私は私らしく生きたい」に尽きる。
セリーと妹のネティは、20年間離れ離れになって一切会うことができなくなっていたが、ラストで再会した時、ものすごい絆で繋がっていた姉妹の愛の深さにただただ号泣した。

「人はみんな平等なはずなのに、なぜこんなことが起こっていたのだろうか」と改めて人種差別について考えさせられる作品だ。

 

 
『ムーンライト』(2016年)


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■あらすじ
マイアミの貧困地域で、麻薬を常習している母親ポーラ(ナオミ・ハリス)と暮らす少年シャロン(アレックス・R・ヒバート)。学校ではチビと呼ばれていじめられ、母親からは育児放棄されている彼は、何かと面倒を見てくれる麻薬ディーラーのフアン(マハーシャラ・アリ)とその妻、そして唯一の友人であるケヴィンだけが心の支えだった。そんな中、シャロンは同性のケヴィンを好きになるが、そのことを誰にも言えずにいた……。

 
広い世界を見ようとせずに、自分が見えている狭い世界の中だけで精一杯生きようとする主人公シャロンの姿に、息苦しさともどかしさがどんどん募っていく。
「生きる」ということの辛さと「本当のことが言えない」弱さが、身体中に浸透し、身動きができなくなる。

麻薬に溺れる母親、信じていた人からの裏切り、いじめられる日々、誰にも告白できない同性愛……。そんな複数の深い闇を覆い隠すように生きてきたシャロンが、ある日を境に自我に目覚め、強く生きようとする姿に衝撃が走る。終盤、同性のケヴィンとの愛の再燃が、なんとも言えないほど美しく、観る者の心を穏やかに満たしてくれる。

「人は、ずっと孤独ではいられない」と、最後にそっと教えてくれる作品だ。

 

 
『大統領の執事の涙』(2013年)


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■あらすじ
綿花畑で働く奴隷の息子に生まれた黒人、セシル・ゲインズ(フォレスト・ウィテカー)は、ホテルのボーイとなって懸命に働き、ホワイトハウスの執事へと抜擢される。セシルは、アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン、フォードなど、歴代の大統領に仕えながら、キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争といったアメリカの国家的大局を目の当たりにしてきた。その一方で、白人の従者である父親を恥じる長男との衝突が始まり、彼とその家族もさまざまな荒波にもまれる。

この作品は主人公のセシルが、人種差別の中でも自信と誇りを持って生きることの大切さを教えてくれる。

冒頭から、白人が黒人を殺しても罰せられることがなかった黒人奴隷時代の衝撃的な光景に息が詰まる。白人の言いなりになるしかなかった日常に、黒人は自分の居場所どころか生きていく意味さえも見出せない。だが、主人公のセシルは、たまたま運が好転し、ホワイトハウスの執事として大統領に仕えた。黒人執事がいないホワイトハウスの中で、一生懸命寡黙に仕事を全うするセシルは、輝かしく誇らしい。終盤、静かなセシルは白人執事との給料格差に納得がいかず、ついには大統領に懇願する。その勇気ある姿はたくましかった。

白人執事と同等の給料という願いが叶った瞬間、「ほんとうに良かった」という安堵感と、人種差別が一瞬にして消えたような爽快感が広がった。

 

 
『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』(2011年)


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■あらすじ
アメリカ・ミシシッピ州の1960年代、白人家庭でメイドとして働く黒人女性は“ヘルプ”と呼ばれていた。作家志望のスキーター(エマ・ストーン)はメイドの置かれた立場に疑問を抱き、彼女たちにインタビューをすることに。仕事を失うことを恐れて、皆が口をつぐむ中、一人の女性の勇気が社会を揺るがすことになる。

 
「なぜ、黒人女性の働き口は、奴隷しかないのだろう。個性は絶対に許されない。」という衝撃的な黒人女性たちの奴隷制度の実情に、驚愕する。

物語の始まりから「メイドは家事をする奴隷」と黒人女性たちの悲痛な実情が次から次へと出てくる。「メイドは、白人の奥様に何を言われてもイエスしか言えない」「白人の出産後はメイドに育児を任せて、遊び呆ける」「トイレでさえも白人が黒人の病気に感染しないように、黒人専用を作る」など、そんな無茶苦茶な人種差別に苛立ちが募っていく。そんな中、作家志望の白人女性スキーターの正義感ある行動に目を奪われる。それは、彼女たちメイドの実情を本にして世の中に訴えること。「こんな差別がいつまでも続いていいのだろうか? 黒人女性たちに自由を。自分らしさを」という、スキーターの強い想いが、本を作る過程の中でひしひしと伝わってくる。
終盤、黒人女性たちとスキーターの本が完成するまでの団結力は、とても美しい。

鑑賞後は、黒人だけではなく、全ての女性がもっと自由でいられるように、自分らしさを追求したくなる作品だ。

 

 

「自由に生きられること」は何よりも幸せなことだ

人はみな、自由に生きられる権利がある。
しかし、差別によって自由が無くなると、心は荒んでいく。人は自由を奪われると、幸せにはなれない。

現代は、紹介した作品の時代に比べて随分と自由になったが、残念ながら人種差別は完全に消えてはいない。差別がなくなり、「すべての人がほんとうに自由になれる日」が訪れるのだろうか――。世界平和を願うばかりだ。

 

text by はらだ なおこ

 


プロフィール

はらだ なおこ
旅人/クリエイター。
会社員でクリエイティブな仕事に従事する傍ら、映画を愛し、弾丸で国内外を旅している。14年前に映画に魅了され、2000本以上を鑑賞。Instagram : makever