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『バンブルビー』 80年代文化を踏襲して、優しい青春映画に正しくトランスフォームする
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『トランスフォーマー』(2007年)は、個人的にはワクワクする映画だった。筆者は、幼少期にテレビアニメ版「トランスフォーマー」を観て、コンボイ(オプティマス・プライム)の玩具をねだったものだ。そんな思い入れがあるだけに期待と不安を感じながら観た同作は、当時の懐かしさが現代の技術や表現でよみがえる、単純な喜びがあった。世界的にも大ヒットを記録した同作は、勢いに乗ってシリーズ化されることになる。しかし、作るたびにそれなりの興行成績は記録するが、映画としての面白さは減衰していると感じていた。

『トランスフォーマー』シリーズ失速の理由は、描写インフレと物語の欠如だろう。CGを駆使した緻密なトランスフォーム(変形)は本シリーズの見せ場だが、2作目以降、マンネリ化に加えて技術的に凝り過ぎて、もはや何から何に変形したのかよくわからない状態になった。そして、何者かもよくわからない彼らによる派手なトランスフォームやバトルシーンを見せるためだけに物語が存在した。観客が、いま何を観ているのかを見失うほどストーリーが雑になった同シリーズは、どんどん期待度を下げていった。そんなシリーズ6作目となる『バンブルビー』は、前述の理由により、映画ファンの注意を引かない可能性がある。しかし、作品の方向性を変化させたことで、期待を大きく上回る秀作に仕上がったのだ。

 

スピルバーグやジョン・ヒューズなど80年代を意識した描写の数々

シリーズの変化を顕著に表す本作のキーワードは、80年代。舞台は『トランスフォーマー』1作目から20年遡った、1987年のカリフォルニアだ。80年代に活躍したザ・スミスなどのミュージシャンたちの楽曲を背景に、大好きな父親を亡くし、家族に対するわだかまりを抱えた18歳の少女チャーリーの姿を描いている。

本作は、『トランスフォーマー』シリーズと言われなければ気付かない作品設定。宇宙から地球にやってきて廃車寸前のビートルに変形した金属生命体バンブルビーと出会った彼女が、と徐々に友情を築いていく。80年代で宇宙人と人間たちの友情を描いた作品といえば、巨匠スティーブン・スピルバーグの名作『E.T.』(1982年)を想起する人も多いだろう。もちろん同作と違って、チャーリーとバンブルビーは、『トランスフォーマー』らしく地球を守るために敵性金属生命体ディセプティコンたちと戦うことになる。目まぐるしく繰り広げられるアクションは玉突き的な連動性があり、どこか楽しさに溢れている。それは、スピルバーグの81年の名作『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』を彷彿とさせる。

また、80年代といえば、ジョン・ヒューズが青春映画の傑作を次々と輩出した年代でもある。本作の主題が、青春期を迎えた少女の友情と人間的成長であるからこそ、彼の代表作『ブレックファスト・クラブ』(1986年)が堂々と引用されるのは腑に落ちるのだ。

 

こじらせ少女の成長による『スウィート“18”モンスター』的コンテキスト

本作を語る上で、主人公にも注目したい。チャーリーを演じたのは、若き才能ヘイリー・スタインフェルド。コーエン兄弟監督作『トゥルー・グリット』(2011年)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされ注目を集めた彼女は、ハリウッドから引く手数多の、期待の若手俳優として成功を収めている。中でも、彼女の主演作『スウィート17モンスター』(2017年)は出色の出来。父を亡くし兄とも折り合いが悪い少女の葛藤と成長を描いた作品で、主人公である17歳のこじらせ少女ネイディーンを好演した。

一方、本作『バンブルビー』では、前述の通り、18歳のこじらせ少女を演じている。本作でも彼女は、バンブルビーとの出会いや友情を通じて、父の喪失と向き合いほんの少し大人になる。『トランスフォーマー』である本作において、『スウィート“18”モンスター』的なコンテキストを意識させるのも面白い。

 

本作の監督は、トラヴィス・ナイト。世界的スポーツメーカー「ナイキ」創業者フィル・ナイトの息子である彼。映画の才能を発揮し、アカデミー賞長編アニメ部門にノミネートされて注目を集めた『KUBO/クボ 二つの弦の秘密』(2017年)を撮ったことで覚えている人もいるだろう。彼は、同作で日本人も唸るほど日本の文化的ディテールにこだわりながら、あくまでそれらを手段として丁寧に物語を描いた。その彼が、飽和してしまった『トランスフォーマー』シリーズを新たに撮ることで、過剰な描写を適切にダウングレードし、少女と金属生命体による友情と成長の物語として、正しくトランスフォームさせることに成功したのだ。『トランスフォーマー』シリーズに疲れてしまった人にこそ、本作は響くに違いない。

by 中井圭/映画解説者

バンブルビー
公開日:3月21日(木・祝)先行上映 / 22日(金) 全国公開
配給:東和ピクチャーズ
監督・脚本:トラヴィス・ナイト

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