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『ROMA/ローマ』を破ってアカデミー賞作品賞を受賞した『グリーンブック』
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2019年2月25日(日本時間)、第91回アカデミー賞授賞式が行われた。

今回のアカデミー賞は、Netflix映画であるアルフォンソ・キュアロン監督作『ROMA/ローマ』が前哨戦を勝ち続けて本命と言われていた。しかし、これまでヨーロッパの映画祭でも議論されてきたように、劇場公開を前提としないネット配信サービスであるNetflixの作品を映画として認めるべきかという問題が、今回のアカデミー賞でも顕在化する。

そして、スペイン語で描かれた外国語映画でもある同作が、アカデミー賞外国語映画賞以外の作品部門、かつ主要賞である作品賞を受賞して良いのか、という議論も巻き起こった。そうして『ROMA/ローマ』は、アカデミー会員が配信および外国語映画に対する見解を世界に表明する、特別な意味を持ったのだ。

作品の外側で繰り広げられる、映画界の複雑な思惑の中、アカデミー賞授賞式が行われた。蓋を開けてみると、『ROMA/ローマ』は外国語映画賞や撮影賞、監督賞を受賞する。しかし、アカデミー賞の最重要部門である作品賞を逃した。アカデミー会員は、『ROMA/ローマ』ではない、もう一本の傑作により多くの票を投じたのだ。その作品こそが、『グリーンブック』である。

本作『グリーンブック』は、62年のアメリカを舞台にした実話ベースの物語だ。NYのクラブで用心棒として働いていたイタリア系白人のトニー・バレロンガは、クラブ改装中で仕事がない期間、コンサートツアーに出るミュージシャンの運転手兼用心棒として一時的に雇われることになる。彼を雇ったのは裕福で知性あふれる黒人天才ピアニスト、ドクター・ドナルド・シャーリー。本作は、問題解決のスペシャリストだが無知で粗野な白人トニーと、教養はあるが孤独で堅物な黒人ドクター・シャーリーが、価値観をぶつけ合いながらアメリカ南部を旅するロードムービーだ。

前述の『ROMA/ローマ』と本作『グリーンブック』には共通する要素がある。それは、マイノリティと絆というモチーフ。『ROMA/ローマ』は、メキシコシティのローマ地区に暮らす中産階級の家族のもとで働く家政婦の姿を描いた人間ドラマ。同作は、政治的混乱に揺れる70年のメキシコで、男たちの身勝手に振り回される、マイノリティとしての女性たちの姿と、苦難を越えて強く結ばれていく家族の絆を描くものだった。

一方、『グリーンブック』は、60年代アメリカが舞台になっていることもあり、黒人に対する差別が凄まじい。特にアメリカ南部は、最も黒人差別が激しい土地。黒人という当時のマイノリティであるドクター・シャーリーは、ある事情により南部をコンサートツアーで巡るが、バーで飲んでいるだけで袋叩きにされるなど、いたるところで差別を受ける。本作のタイトルである”グリーンブック”とは、当時、黒人が泊まることができる宿などを記載した黒人専用ガイドブック。そんな本が存在するほど、苛烈な時代だった。本作は、そんな過酷なコンサートツアーを通じて、トニーとドクター・シャーリーの間で芽生える絆を描いている。

アカデミー賞は、アメリカや世界が抱える課題を提示する役割があり、両作が作品賞にノミネートされたほか、多くの賞を受賞したのは、どちらも世界の課題と向き合っているからだろう。