猫本屋「Cat’s Meow Books」店主と「実は猫が出てくる映画」について語り合ってみた
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猫映画と聞いて、思い浮かぶ映画は何だろうか。

一般的には、猫がメインで登場する「猫と人間の交流を描いたもの」を思い浮かべる人が多いと思う。

しかし、猫がメインじゃなくても、猫が出てくる映画というものは意外と多い。そのような映画も「猫好き」視点から観れば猫映画なのではないだろうか。

 
東急世田谷線・西太子堂駅に、「Cat’s Meow Books(キャッツ ミャウ ブックス)」という猫本屋がある。

ここに並ぶ本は、猫に関する本だけ。それは猫がメインで登場する本という意味ではない。猫がメインじゃなくても、何らかの形で登場する作品であれば、猫本なのだ。

今回は、本だけではなく映画も好きだという、キャッツ ミャウ ブックス店主・安村正也さんと「猫映画」をテーマに夜会を開いてみた。本記事では、その模様をお送りする。

 

安村正也さん
1968年大阪府生まれ岡山県育ち。猫と本とビールが楽しめる本屋「Cat’s Meow Books」店主。猫本を専門に扱う店内では、5匹の猫店員が出迎えてくれる。猫店員が接客してくれるかどうかは「気まぐれ」なのだそう。

 

猫が出てきたら、もう猫映画

――映画を観てて、猫が出てくるとやっぱり気になったりしますか?

安村: こういうお店なので、やっぱり映画でも猫が出てきたら「おっ」って思っちゃいますね。

今だったら『ボヘミアンラプソディ』。あれは完全に猫映画ですよ。

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――猫映画の文脈でその名前を聞くとは思いませんでした。

安村: フレディ・マーキュリーが猫好きなんです。だから、部屋の中のシーンではちゃんと猫が出てくる。ストーリーには一切関係ないですけど、ちょいちょい出てきて、それがめっちゃかわいいんですよ(笑)

――それは事前に猫が出てくることを知ってて観に行ったんですか?

安村: 予告編にピアノの上を猫がばーって走るシーンがあるので、これは確実に猫が出ると思って観ました。猫が出るとは思ってましたけど、この映画に関して言うと、想像以上に猫がたくさん出てきたので思わず嬉しくなりましたね。

――期待を超えてきたんですね。

安村: 僕は完全に猫映画だと思って観てるんですけど、それは猫好きだからそういう視点になるんですよね。猫に興味がない人からしたら、「何で猫がいるんだろう……」くらいの扱いだと思います。ストーリーには関係ないですから。

でもそういう感じで、映画を観るときは猫好き視点になってしまうので、最近ではどんな映画を観てても猫が出てこないと「猫、出てこなかったな……」とがっかりするようになりました。

――出てこないのが普通なんですけどね(笑)

 

それだけ映画の中で猫を探してしまう安村さんにとって、特に印象に残っている猫映画って何ですか?

安村: 『エイリアン』ですね。シガニー・ウィーバー主演の『エイリアン』の第一作目。

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――猫いましたっけ?

安村: 最後の最後に、脱出カプセルでシガニー・ウィーバーが脱出するんですけど、猫がいないことに気づいて、わざわざ危険を冒して探しにいくんですよ。

――ああ! そういえば

安村: 他のみんなが殺されてしまって、それでもなんとか逃げようとしてるってときに、「何で猫のために危険を冒すんだよ」ってシチュエーションなんですけど、あれは猫好きだとよく分かるんですよね。

――分かります。探しに行きますよね。

安村: あれは当初、エイリアンが猫に寄生して、そのまま地球に戻ってしまうという伏線のために猫と一緒に逃げる必要があったらしいんですよ。でもそれは採用にならなかったから、単純にエイリアンを倒して猫と一緒に帰る話になってるんですけど。

――『エイリアン2』がもしかしたら「地球が大変なことになった」って話だったかもしれないってことですよね。

安村: そういう話にもできたという話ですね。そのために猫がいたんですよ。

 

人間は猫の下僕なんです

――過去の名作映画でも、見直すと「実は猫が出てる」映画がもっとありそうですね。

安村: さらに昔のパニック映画なんですけど、『タワーリング・インフェルノ』という映画があって。

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安村: 高層ビルの落成パーティーで起こった火災を巡り、さまざまな人間模様が描かれるのですが、そのビルには住居層があり、猫を飼っている未亡人が出てくるんです。未亡人はパーティーで出会った詐欺師のおじいさんが、自分を騙そうとしてることに気づきながらも、彼に想いを寄せます。火災によるパニックの中、二人はお互いの気持ちを確かめ合い、再会を誓うのですが、脱出の途中にその未亡人は亡くなってしまう。未亡人の飼い猫は、運良く警備員に助けられていて、彼女の形見として彼に渡されるんです。

安村: 猫好きじゃない人は「別に猫を出さなくてもよかったんじゃない?」と思うかもしれませんね。登場シーンも少ないですし。でも猫好きとして観てると「猫が生き延びてよかった!」って、猫ばかり気にしてしまいます。

――猫の安否を気にしちゃいますよね。

 

安村: 『ペット・セメタリー』という映画を知ってますか?

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――スティーブン・キング原作の映画ですよね。

安村: 若い夫婦が引っ越してきた場所に、死者が蘇る墓地があるんです。ある日、夫婦の飼い猫が車に轢かれて死んでしまい、その墓地に猫を埋めたことから始まる不穏な物語。その後、主人公は自分の息子まで蘇らせることになります。

『ペット・セメタリー』も『タワーリング・インフェルノ』も『エイリアン』も、少し前のハリウッド映画です。共通するのは、何でそういうことするんだよってバカな男が出てきて、その男のせいで世の中や周りの人がひどいめに遭うこと。最終的には、諸悪の根源であるその男もひどい目に遭うというすごく分かりやすい構図なんですよね。

そういう構図を理解した上で、そこに猫がどのように絡んでくるのかという視点で昔の映画を観るのも面白いですよ。

――おお。「なぜここで猫を出したのか」とか考えるの面白いですね。

安村: 『ペット・セメタリー』なんて、それこそ犬でもいいんですよ。

――確かに。

安村: あの墓地では、埋めて蘇るとみんな凶暴になるんです。なぜ主人公が猫を蘇らせようとしたかというと、娘がすごく猫を可愛がっていたから。猫好きはたぶん「そうしちゃうのも仕方ない」と思います。

――人間に溺愛されている存在だから、共感する人が一定数いそうです。

 
安村: やっちゃいけないのに埋めて蘇らせたり、大火災でも猫のために戻ったり、殺されそうなのに宇宙船に戻る。要は人間は猫の下僕なんですよ。

――人間は猫の下僕。

猫店員: にゃー。

 
――それで言うと『エイリアン』とか『タワーインフェルノ』は、人間はたくさん死んでも猫は死なないって話ですもんね。

安村: 『ペット・セメタリー』は一回死んで蘇って、また殺されちゃうんですけどね。でも、猫が出てくる作品は共通して、猫が生き延びることが多いかもしれませんね。

――猫は割と生き延びる、と。

 

猫が持つイメージが映画の中でどのように作用するのか

安村: 猫は殺されると化けて出てきますからね。

――そう考えると、ホラーとか、怪奇モノにも結構出てくるんですか?

安村: まあ日本の昔の映画は化け猫とか、猫はそもそも妖怪扱い。老猫になると妖怪になりますね。「猫又」みたいな。

――猫って第六感が発達してるから霊的なものを感じることができるとか言うじゃないですか。ホラーではないですが、『ゴースト ニューヨークの幻』で主人公が死んでから恋人に会いに行ったとき、恋人の飼い猫だけは主人公の存在に気づいているシーンがありましたね。

 

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安村: なんか神秘的な象徴ではありますよね。

――黒猫は不吉の象徴ですね。あと象徴とは違うのかもしれませんが、金持ちの家にはペルシャ猫がいるイメージがあります。

安村: (笑)。

 
そういう意味で考えると、敵役の近くに猫が出てくるのはあるかもしれません。ウェス・アンダーソンの『犬ヶ島』を観に行ったんですけど。

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安村: あれは犬がメインの映画なのですが、悪い市長は猫飼ってるんですよ。猫派なんです。

――確かにボスみたいな人が猫を撫でている画って良く見かけます。

 

――ボスのそばにいるのが犬だと、単純な主従関係に見えますが、猫だと嗜好品感が出て、より悪い奴に見えるのかもしれませんね。猫自体が敵の作品とかは珍しいんですかね?

安村: 『縮みゆく人間』という作品があるのですが、身体が縮んだ主人公が猫に襲われるというのはありますね。

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小説だと猫が凶暴化して人間を襲ったり、大量化してパニックになったりとかもあるんですけど、映画でそのパターンってあまりないかもしれないです。

――『ペット・セメタリー』では猫は襲ってこないんですか?

安村: 主人公に「シャーッ!」てケガさせるくらいで、主体的に襲ってきたりはしないんですよね。

――凶暴になると言っても、気性が荒いだけなんですね。

安村: 人間が蘇ったときは主体的に襲ってくるのに、猫に関してはその程度です。

――意外ですね。猫ってもっと凶暴そうなイメージ。

安村: 画として面白くないのではと思います。身体のサイズ的にライオンとかトラなら動物パニックモノでよくありますけど、猫だと画にならない。ぬいぐるみを振り回してるみたいな画になるんじゃないですかね

――確かに。そういう迫力はないですね。

安村: 画的な面白さとしては、目を光らせて悪者の膝の上に載ってるくらいがちょうどいいのかもしれませんね。

 

おわりに

猫がメインで登場しなくてもそこに猫が出てくるのなら、それはもう猫映画なのだ。

過去の名作映画も改めて鑑賞すると、実は猫が登場するという猫映画がたくさん見つかるかもしれない。

そのような映画を「なぜこのシーンで猫を出す必要があったのか」「映画内で猫がどのような役割を担っているのか」という視点で考察してみるのもきっと楽しい。もちろん、単純に「猫の可愛さ」を堪能することも忘れてはいけない。

こんな映画の楽しみ方も、ありなのではないだろうか。

 

text by 早川 大輝

 


プロフィール

早川 大輝
1992年生まれ。編集プロダクションを経て、フリーランスの編集者・ライターに。趣味は1日中ドラマを観続けること
Twitter:https://twitter.com/dai_nuko