数々のドラマを手掛けているドラマ監督の秋山純氏にとって大切な作品とは?
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POPLETAでは様々な業界、いろいろな業種の方に自身が影響を受けた作品や人物について話を聞いている。第7回は、元テレビ朝日の演出家・プロデューサーで、現在は1月26日、夜10時放送、NHKBSプレミアム 特集ドラマ「ネット歌姫」演出の秋山純さんに話を聞いた。

対談者プロフィール

  • 秋山純:元テレビ朝日所属の演出家・プロデューサー。現在は(株)JACO代表取締役。テレビ朝日時代は高橋克典主演の『特命係長 只野仁』『匿名探偵』シリーズを14年間に渡り監督。代表作に『同窓会ラブアゲイン症候群』『陽はまた昇る』『ママが生きた証』『狙撃』『就活家族』『アストロ球団』など。スポーツ番組『ナンだ⁉』『熱闘甲子園』やPV、CMなど多岐に渡り制作。1月26日放送、NHK BSプレミアム「ネット歌姫」演出。ホームページ:akiyanj.com
  • 首藤和仁:株式会社KADOKAWAのWEB漫画サイトComicWalkerの元・副編集長。和田ラヂヲ著書『猫も、オンダケ』では漫画担当および同作のアニメプロデューサーを就任。現在はイマジニア株式会社のマンガほっとにて、天月みご著書『酒男子』や伯林著書『メダロット再~リローデッド~』のクロスメディアプロデューサーに。また『マモニャン』のキャラクターデザインとコミカライズ担当、株式会社エスケイジャパンにて『忠犬もちしば』のコンテンツプロデューサーとしても鋭意製作中。

 

『青が散る』がきっかけでドラマ監督を目指す

首藤:秋山さんがドラマの監督になりたいという気持ちになった作品はなんですか?

秋山:僕が大学の時の時に見た、『青が散る』という作品ですね。これは宮本輝さん原作で石黒賢さんの主演ドラマデビュー作なんですよ。佐藤浩市さんは映画「魚影の群れ」撮影直後で、テレビドラマに本格的にレギュラーで出るのは、この作品が初めてだったと思います。あと二谷友里恵さんもこの作品でデビューして、川上麻衣子さんや国広富之さんとか遠藤憲一さんも出演していて、いまにして思えば、ビックリするようなメンバーが共演していました。宮本輝さんの原作本も好きで、めちゃくちゃ乱読しました(笑)。

首藤:そこまでこの作品のとりこになった部分は?

秋山:当時、体育会テニス部で主人公達と同じような生活を送っていたということ、あと舞台が出身の神戸なんですよ。松田聖子さんの『蒼いフォトグラフ』っていう曲がテーマ曲で、挿入歌『人間の駱駝』は、長渕剛さん作曲で、どこをとっても僕には名作なんですよね。原作本も素晴らしくて宮本輝さんの著作で、『道頓堀川』を青春時代の裏とするなら、『青が散る』は青春時代の表と呼ばれていたくらい、とても深い作品なんです。

首藤:さすがお好きな作品だけあって解説が熱い!(笑)。

秋山:(笑)。なので、主人公の椎名燎平の生き方が、今の自分のバイブルになっているくらい。人生の節目で必ず原作本を読みますね。この作品を見て、自分でも撮りたいなと思っていました。

首藤:ちなみに『青が散る』の出演者の方とドラマは作られましたか?

秋山:佐藤浩市さんが主役のドラマ『ハッピー・リタイアメント』の監督をしました。石黒賢さんにも出演していただいて。おそらくお二人は『青が散る』以来の共演だったと思うのですが、お二人とも僕が『青が散る』のファンである事を知っていて、僕が持参していた当時の脚本集を現場でお二人に渡したら、なんと目の前で演技してくれたんですよ! 本当に贅沢な時間でした……。

首藤:ええーっ!? それは凄い!! きっとお二人にとっても思い出深い作品なんでしょうね。

秋山:石黒賢さんのデビュー作という事もあり、佐藤浩市さんが芸能界についてはゼロから教えて、弟のように可愛がったと聞きました。で、これは裏話ですが、共演者がみんな朝ロケの前に集まって、早朝野球をしてから現場に行ったとか(笑)。今はあまりないかもしれないですが、時間を共有して「良い作品を作るぞ!」という一体感みたいなものが当時はあったんでしょうね。

 

大ファンの長渕剛さん

首藤:最初のドラマ作品は?

秋山:萩原健一さんが主役の『外科医柊又三郎』です。この現場はですね、業界では伝説になっているくらい、物凄い壮絶な現場でして…まったく書けない事だらけで……。

首藤:怖いので後でこっそり聞かせてください(苦笑)。助監督時代は長かったのですか?

秋山:助監督はそんなに長くやったわけじゃないんですが、フォース・サード・セカンド・チーフとやりました。最初に助監督をやったのが萩原さんで、最後が長渕剛さんなんですよ。

首藤:長渕剛さんとは何の作品をやったんですか?

秋山:『ボディーガード』というドラマで、今のところ長渕さんがやられた最後の連ドラですね。2話目からチーフで呼ばれて。僕、そもそも長渕剛さんの大ファンで高校の卒業文集に『逆流』の歌詞を書く程のファンなんです(笑)。

首藤:憧れの長渕さんとご一緒できるなんて最高じゃないですか!

秋山:とはいえちょっと怖かったですけど(笑)。僕から“長渕さん大好きオーラ”が凄い出ていたと思うんですよね。それで最後まで続けられたと思います(笑)。最後に握手してくれた時は本当に嬉しかったなぁ…。

首藤:長渕さんを好きになったきっかけの曲ってありますか?

秋山:『長渕剛のオールナイトニッポン』をずっと聞いていた世代なので『順子』や『巡恋歌』の前の『雨の嵐山』から聴いていて、ほぼ全曲語っちゃうくらいですけど…(苦笑)。やっぱり高校の卒業文集にも書いた『逆流』ですかね。


秋山純さんが書いた『逆流』のPOP

 

『特命係長 只野仁』に携わったきっかけは『傷だらけのラブソング』

首藤:ご自分が携わった作品で、印象に残っているエピソードはありますか?

秋山:39歳から40歳くらいかな。その当時いろいろとあり、仕事を辞めようかなと思っていた時期で、自分の中でスランプだったと思うんです。そんな状態で見た、高橋克典さんが主役で中島美嘉さんのデビュー作『傷だらけのラブソング』というフジテレビ系列のドラマが本当に素晴らしく、番組のプロデューサーだった東城祐司さんへ感動のあまり電話をしてしまって。そんなに面識があったわけじゃないのに。

首藤:「辞めよう」と思うくらいのスランプから、脱出できそう作品が衝動を起こしたのでしょうね。

秋山:そうですね。その事を東城さんが鮮明に覚えていてくれて。『特命係長 只野仁』のスタッフってじつはその『傷だらけのラブソング』のスタッフなんですけど、その中に僕だけ入れてくれたんですよ。お話をいただいた時はびっくりしました。

首藤:おおーっ!! その時、この業界を離れようと思っていた気持ちは完全にリセットできましたか?

秋山:そんなのはもうすぐに!(笑)。とにかくそれから夢中で『特命係長 只野仁』をやらせていただいて、主演の高橋克典さんとも一緒に切磋琢磨する仲になれて…。

首藤:順風満帆が到来しましたねっ。

秋山:それが『特命係長 只野仁』の監督している途中、会社から異動を命じられたんですよ……。最初に配属されたスポーツ局にまた戻れと。僕は父を幼い頃に亡くしていて母子家庭だったんですけど、母親が癌になってしまい、手術をしなきゃいけないという瀬戸際でした。でも、監督という立場上撮影しなくてはならなくて、手術の当日だけ帰ったんです。その時に異動と言われて。

首藤:辞令とはいえ、これは辛すぎる…。

秋山:手術の翌日も朝イチでロケがあって、本当に申し訳ないけど手術には立ち会えない。手術の承諾書のサインを書いたのが最終電車に乗れるギリギリの時間で。乗り遅れて現場に戻れなかったら運命を受け入れて、自分の人生を変えようと本当に思ったんです。病院から最寄りの駅までタクシーが来ないのでダッシュして駅に着いて、快速に乗って新大阪駅に着いたら発車のベルが鳴っていたんですね。そして新幹線に飛び乗ったら、プシューっとドアが閉まって東京に帰れちゃったんです。

首藤:なんかドラマの原作のような展開だ…。

秋山:その時に、手術にも立ち会わない親不孝者なんだけど、「一生ドラマをやろう」って思ったんですよ。その後、撮影中に電話がかかってきて「成功しました!」と。ただ、現実は会社から異動の通知をされていて、きっと『特命係長 只野仁』の監督をするのはこれが最後だなと思い、スポーツ局に戻ったんです。まあ僕もただでは起きないというか『アストロ球団』というドラマもスポーツ局でありながら作ったりはしていたんですけど(笑)。


秋山純さんが書いた『特命係長 只野仁』のPOP

 

高橋克典さんの男気に感動

首藤:というかスポーツ局に配属されながら、ドラマ制作ってできるものなのですか?

秋山:その時の上司が、僕の得意分野を凄くわかってくれる方だったので、ある意味奇跡的にできました(苦笑)。その1年後に『特命係長 只野仁』のパート2をやるという話になったんですけど、僕はスポーツ局所属のままだったので、スポーツ局の人間がすでにテレビ朝日の看板的なドラマになっていた『特命係長 只野仁』のパート2の監督をやるってありえないじゃないですか。

首藤:さすがに物分りの良い上司でも組織的に無理でしょうね…。

秋山:そしたらある日、会社から呼ばれたんですよ……「お前をどうしても撮影に参加させて欲しいと、高橋克典さんが言っている」と。

首藤:おおおおおおお!?!?

秋山:「克典さんの強い意向で、会社としてお前を出すことにしたので」と……。そんな事を言ってもらえるとか、これ泣きますよね。

首藤:すでに胸と目頭が熱くなっています……高橋克典さん、かっこよすぎ……(感動)。

秋山:それに東城プロデューサーが、「どうしても秋山が必要だ」と言ってくれて……。だから『特命係長 只野仁』のパート2はスポーツ局でありながら撮りました。もう死に物狂いで。しかも高橋克典さんが自ら「秋山と仕事をしたい」と言ってくださったのに、僕が現場に行った時にはその事は一言も言わないで「おお、久し振り」だけ。

首藤:かっこよすぎる! もうファンを飛び越えて、男として高橋克典さんになりたい!!

秋山:わかります(笑)。その後ずっと色々と仕事をさせていただいていますけど、その時の気持ちは一生忘れないし、あの時の経験があったから、今の自分の全てが集約されていると実感しています。

 

人徳と熱い想いで数々の素晴らしいドラマ作品を作り出してきた秋山さん。
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プロフィール

秋山純
元テレビ朝日所属の演出家・プロデューサー。現在は(株)JACO代表取締役。テレビ朝日時代は高橋克典主演の『特命係長 只野仁』『匿名探偵』シリーズを14年間に渡り監督。代表作に『同窓会ラブアゲイン症候群』『陽はまた昇る』『ママが生きた証』『狙撃』『就活家族』『アストロ球団』など。スポーツ番組『ナンだ⁉』『熱闘甲子園』やPV、CMなど多岐に渡り制作。1月26日放送、NHK BSプレミアム「ネット歌姫」演出。ホームページ:akiyanj.com
首藤和仁
株式会社KADOKAWAのWEB漫画サイトComicWalkerの元・副編集長。和田ラヂヲ著書『猫も、オンダケ』では漫画担当および同作のアニメプロデューサーを就任。現在はイマジニア株式会社のマンガほっとにて、天月みご著書『酒男子』や伯林著書『メダロット再~リローデッド~』のクロスメディアプロデューサーに。また『マモニャン』のキャラクターデザインとコミカライズ担当、株式会社エスケイジャパンにて『忠犬もちしば』のコンテンツプロデューサーとしても鋭意製作中。

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