“善と悪がどこから来るのか知りたかった” 映画『デイアンドナイト』藤井道人監督インタビュー
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2019年1月19日(土)に秋田県先行公開、1月26日(土)に全国公開される、映画『デイアンドナイト』。
主演の阿部進之介さんが企画・原案、山田孝之さん全面プロデュースの本作でメガホンをとったのは、ドラマ『100万円の女たち』や映画『オー!ファーザー』などを手掛け、2018年12月7日には新作映画『青の帰り道』も公開された、若手注目株とも呼び声の高い、藤井道人監督。

今回goo POPLETAでは、藤井監督に単独インタビューを行い、映画『デイアンドナイト』に対しての思いや、藤井監督が影響を受けた作品などを聞きました。

 

「善と悪はどこからやってくるのか」それを知りたかった

――キャッチコピーである「善と悪はどこからやってくるのか」という言葉が生まれた背景はどんなものだったのでしょうか。

善悪に対して、どちらから見るかで定義が変わると思っていて。悪というもの、善というものの定義がどこからやってくるのかっていうのは、この昨今の社会に属した身としてすごく疑問に思うことだったんです。そういう感覚って、この時代や今の日本のどこからやってきたんだろう、という一つの疑問からこの映画が生まれて。「どこから」という言葉は、何が運んできたのか、ということなんですね。そう思う中で、映像的に僕の中で強くイメージしたのが風車なんです。

――だから今回、風車が映画のシンボルとなっているのですね。

©2019「デイアンドナイト」製作委員会

そうなんです。この映画は、風車が回る町で起きる、善と悪の物語なんです。僕は、何かを批判したり、何かを賞賛したりする映画にはしたくなくて、何かのせいでこうなってしまった町の人たちの物語を作りたかった。それを観客にのぞき穴から見てもらうようなイメージで描いたんですが、僕自身も善と悪がどこからやってくるのかを知りたいからこの映画を撮った、という感覚があります。

――映画を撮っていく中で、監督自身もその答えを知ることができたのでしょうか。

はい。この映画の最後に問いかけがあるんですけど、台本は違うことが書いてあって。オールアップの一番最後のシーンなんですが、撮影前日に「この答えじゃない気がする」と思ったんです。そして、ずっと撮ってきながら、自分の中で出た答えが今回の映画の最後でした。なので、自分自身も分からないからこの映画を撮ったというか。彼らの心情だったり、バックボーンだったり、そういうものは分かるけれども、本質的なものが何なのかっていうのは俳優部と一緒に映画の旅を続けていく中で答えが出たんです。

 

30代の監督達が描いた「善と悪」

©2019「デイアンドナイト」製作委員会

――監督が仰っていた「どちらから見るかで定義が変わる」という捉え方の「どちらから」は、例えばどんなことでしょうか。

例えば、この映画をもし50歳の方や80歳の方が撮ったとしたら、きっと解釈が変わってくるなと思っています。僕は32歳なんですが、今の30代の人たちにおける善悪の定義って非常に汚染されているし、自分たちの言葉で何かを説明する、これが善である、悪であるっていう定義を自分たちでしちゃいけないと教育されてきたのが僕たちの世代なのではないかと。そして、答えを出すことから逃げる事にうまくなってしまった世代でもあると思っているんです。自分たちのコミュニティを作って、言いたいことはソーシャルの中で書く。そんなふうに表面的に人と接することが非常にうまくなってしまった自分たちの世代の善悪の概念と、先輩たちの概念は多分違うと思います。この映画は、山田さんを筆頭に、30代の僕たちが描く「善悪」なんです。

――年代によっても「善悪」は変わるということですね。

そうですね。なので、それは色々ですし、僕たちの中で一つ出た答えとしては、「愛」というと言葉として重いんですけど、「敬意」というか、隣人愛というか、人のことを思うということで。「何かしてあげたい」という思いやりだけで世界は少しだけ変わるっていうことを、この映画の中で意外に大事にしていて、目線一つだったり、本当にしゃべってあげたいけど喋らないとか、そういった細かい部分はこの答えが出ていないからこそすごく大事にしている部分かなと思います。

 

明石は善悪のレースに乗れなかった人

©2019「デイアンドナイト」製作委員会

――善が悪にも、悪が善にもなると考えたとき、人間は善と悪の部分、どちらが多いと思われますか?

最近の色々な情勢や時事などを調べていくと、どちらにも言い分があるし、どちらにも思惑があって。正義と言うより、大義とか義務とか、そういうものを正当化する風潮がすごくあると思うんです。そのこと自体を誰かが「それは悪だ!」と言うこともあるとは思うのですが、その時に相手がなぜこれを判断したのか、選択したのかをしっかりと議論できるような関係であればいいのかなと思います。なので、どちらが多いというのはあまりなくて、相手がなぜそう言ったのか考えることが大事な気がします。

――悪や善と決めつけてしまう前に、相手の立場にたって考えることが大事なのですね。

そうですね。今回、田中哲司さん演じる三宅が、映画の中ではどこか“悪”のように描かれているのですが、僕はそう思って描いてはいなくて。というのも、彼が言っていることはすごく正しいんです。社会として一番正しいのは彼であって、数の論理に負けることだってあるから。ただ、その数の論理に入れなかった人達だって生きているということを描きたかったんです。

――それが明石、ということでしょうか?

そうです。善悪のレースにも乗れなかった人の「善悪」が曖昧になっていくさま、それが多分明石なんですね。彼は、忘れられた名も無き人ですから。きっと東京の居酒屋でホールのバイトでもしながら生活していて、日本の社会にすごく汚染されている。そんな彼が北村や奈々に出会って、善悪の境界線が分からなくなっていく。でも彼は自分で探そうとするんですよね、答えを。そこをしっかり見たかった。考えることが大事だよな、と思いました。

 

監督が嫉妬した、グザヴィエ・ドラン監督の『マミー』

――監督が影響を受けた映画はありますか?

やっぱりアジアの映画が好きですね、ウォンカーワイ監督作品とか。ヨーロッパの映画なら、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督。彼らの映画は市井を描いているんです。中でも、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の『ビューティフル』には影響を受けました。移民が増えたスペインのバルセロナで、主人公がどう生きるかを描いた映画なんですが、僕と阿部進之介がすごく好きな映画です。

――お好きな映画は見返しますか?

僕はあまり映画を見返さないです。怖いんですよね、真似てしまったりするのが。自分が物を作る立場になったとき、あまり影響され過ぎず、自分の言葉でどう作るかを考えるので、自分の中で美化しておいたほうが自分のものにできますし、純粋に映画を楽しんで観たいという気持ちもあります。でも、「これは悔しい!」って思った映画が、年齢が近いグザヴィエ・ドラン監督の『マミー』。映画館で公開一週目に観たのですが、この映画には正方形の画角が変わっていく瞬間があって。それを観たとき「上映エラーが起きてしまえ」と思ったくらい、これはすごいと。「頼むから、俺がやったことにしてくれ」と思うくらい、素晴らしくて。同じように悔しがってもらえるようなことを僕もしたいし、半分冗談で半分本当なんですが、すごい嫉妬しましたね。

POPを書きながら、「今までで一番へたくそだったね、なんて言われちゃわないかな」とチャーミングな笑顔を見せてくれた藤井監督。監督が考えた映画のキャッチコピーと、この映画の象徴である風車のイラストを描いてくれた素敵なPOPがこちら。

藤井道人監督が書いた『デイアンドナイト』のPOP

 

混沌とした現代に生きる全ての人々に「善と悪」を問いかける本作。
善と悪がどこからやってくるのか、そしてこの映画のラストに監督が出した答えを、家族や友人と話し合ってみてはいかがでしょうか。

映画『デイアンドナイト』は、2019年1月19日(土)秋田県先行公開、2019年1月26日(土)より全国公開です。

【衣装】
ジャケット、ベスト、スラックス/companie van verre
シューズ/masatomo sato
問い合わせ/Studio-hidden(03-6885-4573)


プロフィール

藤井道人
東京都出身。日本大学芸術学部映画学科卒業。大学在学中より、数本の長編映画の助監督を経てフリーランスディレクターとして活動開始。
現在は映画監督、脚本家をはじめ、様々な映像作品を手掛ける。映像分野ではAMERICAN EXPRESS、ポケットモンスターなどの数々のCMをはじめ、ドラマ・MVと幅広く活動中。主な監督作品は『オー!ファーザー!』(14)、『7s/セブンス』(15)、ドラマ『100万円の女達』(17)、2018年12月7日に公開した『青の帰り道』などがある。

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