シンガーソングライターReiが語る最新作『REI』に込めた思いと映画と音楽の関係性
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4歳より始めたギターを用いたスキルフルなプレイとフレキシブルなボーカルが魅力のRei。現在25歳の女性シンガーソングライター&ギタリストだ。

国内外のフェスにも多数出演し、日本人ミュージシャンでは初となる<TED NYC>にも出演した。

出自のブルースフィールやファンキーな音楽性やギタープレイのみならず、楽曲毎・作品毎に様々な音楽性と異種配合させてきた彼女。それらはどれも自身のセンスや感性を交え、オリジナルな楽曲として都度明示されてきた。

そんなReiがバラエティさとフレキシブルさ、意外さと驚愕さを擁した1stアルバム『REI』を完成させた。


 
実は音楽制作のみならず、自身のMVのプロットやジャケットやアーテイスト写真のアートディレクションも担う彼女。また映画にも造詣が深く、これまで観てきた数多くの作品中、自身の音楽に活かされ糧になったものも多いと聞く。

そんな彼女のおすすめの映画の紹介と共に、自身の映画観や趣向、新作やそのアートワークについても語ってもらった。

 

——まずは1stアルバム『REI』の話から。今作は12曲12通りのバリエーションを感じました。いわゆる「これもこれもこれもReiです!!」みたいな。

幅広いサウンドかつ自分がいま強く抱いているメッセージ等も含ませて作れた自負はあります。元々万華鏡のような作品にしたくて。おかげさまでカラフルな作品が完成しました。

これまでセッションライブ等で共演させてもらった様々なミュージシャンにも参加いただけたし。2018年の私の全てが詰まった作品です。

——もっとギターがフィーチャーされた作風を予想していましたが、かなり歌とサウンドが前面に出た作風ですよね?

実は私にとってギターはバイプレイヤーであって決して主役ではないんです。

もちろんそこをエンジョイしていただくのは光栄ではありますが、そこは私のアイデンティティそのものではなくて。それよりも歌や伝えたいこと、それを伝えるための技術の方がプライオリティが高いんです。

——確かにこれまで以上に分かりやすいメッセージ性を擁しています。

分かりやすく伝えよう的な意識は特になかったんです。アルバムタイトルに「光」という意味を持たせているのも、音楽は人を明るい方へと導くものであって欲しいとの願いを込めてのことだったりもして。

それも含め収録楽曲にも最後は前を向いている着地点を意識して歌やメロディを作ってました。

——その「自分の音楽でハッピーになってもらいたい」そんな想いに今作は溢れています。

音楽はそのように心の栄養や人の気持ちを前に向かせたり、後ろに向かせたりすることを手助けできるものですからね。エゴをただ押しつけるのではなく、その人に、「これを聴いてもらった際にどのような気持ちになるだろうか?」は各曲かなり深く考えました。多くのミュージシャンに参加していただいたことで、より人との共存も実感できたし。

——今作の聴きどころを教えてください。

最初から最後まで聴いてストーリーが浮かんでくる作品になったと自負しているので、是非じっくりと向き合って聴いてもらいたいです。と言うのも今作は流れを凄く意識したところもあって。

それこそプレイリストやサブスクの良さは、好きなもの、気に入ったもの、興味のあるものをつまみ食い出来る面じゃないですか。美味しかったら実際にお金を出して食べに行く、みたいな。そのような要素の反面、楽曲が切り売りされるデメリットもある。

対してアルバムは一つの大きなストーリーが描けますから、それを提示できた感はあります。

——今作のアートワーク周りも自身で行ったとか?

そうなんです。全部自分のもので統一したい的な過保護さとはまた違った意味合いで。音以外でもその音を補足できるものとしてやらせてもらっています。これらは私の中では非常に重要なファクターで。

——各々音の世界観を補完していくような?

かなり重要視しているし気を使ってます。みなさんも音楽を聴く時に、そのアートワークも付随してくる時があると思うんです。例えば、その音楽を聴いたらジャケットやMVのシーンが浮かんできたり……。それらは凄く音楽の世界観に寄り添う大切なものだと捉えていて。

——今回の1stフルアルバム『REI』のアートワークに際してはいかがでしたか?

これまでの3枚のミニアルバムは光の三原色を表していたんです。いわゆる赤、青、緑と。

それらが合わさると光になる。それと今回のアルバムの『REI』は『Ray』=光という意味も含まれていたので、そこも踏まえ今回は「光」をコンセプトにしたんです。

ジャケットに関しても光の存在を感じるようなアートワークを目指しました。

——実際のジャケット写真には柔らかく透明感のあるナチュラルで優しい光が当たっています。

自然光の中で撮りました。存在感のある光というか。それを捉えたくて。たまたま撮影の日に早く現地に入ったら、柔らかくて物凄くいい自然光が入っていたので、それこそ10分ぐらいのタイミングでしたが、その間に撮ってもらいました。偶然でしたがまさにグッドタイミングでしたね。

——今後もアートの部分はReiさんにとって重要なファクターになりそうですね。

今後もその辺りの意識や感覚は研ぎ澄ましていきたいですね。私自身音楽を作る際に絵画を見たり、景色を眺めたりと視覚的な要素からインスパイアされることも多いので、音とアートワーク、どちらから入っても楽しめるようにはしていきたいです。

とは言え、この音楽でもアートでも受け手にも余白を残しておきたくて。いわゆるその方のイマジネーションを用いて自身の中で完成させていって欲しいですから。音楽にしてもライブにしてもそのインタラクション性は大事にしているので。

 
——ここからはおすすめの映画のお話に移りたいんですが。けっこう映画は観る方ですか?

色々とググってみてピンときたらわりと即映画館に行っちゃうタイプです。

——やはり音楽映画が多い?

特にそんなことなく。私、色彩美のある映画が好きで。後は良い噂を聞きつけて、観に行っちゃうパターンが多いです。

——その「色彩美で選ぶ」という感覚もユニークですね。

その辺りに注目しながら観る機会は多いです。中でも、例えば『EUREKA』(ユリイカ=青山真治監督。2001年公開)、これは邦画なんですが、ずっとセピアっぽいトーンで進んでいくんですけど、最後にじわーっと色が現れてくるんです。そういった表現とリンクした色使いが大好きで。

『EUREKA』
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——Reiさんの中で映画と音楽の結びつきってあったりしますか?

多分にあると思います。聴いただけで光景や視覚的なイメージが浮かんでくる感じは、私の音楽を作る上でも重要なところでもあって。

——流れている音楽や使われている音楽を気にしたりは?

しますね。

今回挙げさせてもらった『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』にしても、トム・ハンレイシュ(Thom Hanreich)というシンガーソングライターが音楽を担当していて。普段はポップスを作っている方なのに、「彼が映画音楽を担当したら、このようなものを作り上げるんだ!?」的な発見がありました。

この映画は、ピナ・バウシュというパフォーマーであり演出や振りつけもやっている既に故人の表現者をフィーチャーした作品で。あまりダイアローグ(対話、セリフ)が無い中、音楽が凄く重要な言葉の代わりを担っているなと感じましたね。

 
『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(原題:Pina 3D)

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私自身はダンスはやらないんですが、ダンスには元々凄く興味はあって。『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』等のバレエダンサーの映画を観たりはしていたんです。

『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』
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そんな中、この映画の存在を知り、最初は興味本位で観に行ったら、私が知っていたり、想像していたりしたダンスとは全く違った世界が広がっていて。ダンスに演劇を掛け合わせた「タンツテアター」というジャンルの踊りが凄く新鮮に映ったんです。

あとはダンスという表現に留まらないというか。ダンスで表現しているのに伝わってくるものが愛だったり、哀しみだったり……。観ていて楽しいだけじゃない。その感情を引き起こす表現が凄く衝撃的でした。「この人たちはどういったことを考えて踊っているんだろう……?」とか、それぞれのダンサーの人生やその時の気持ちや想いを想像させる映画でもあります。

その表情の作り方や振りつけの妙だったり、その辺りも見どころだったりするし、色々と妄想するのが好きな人ほど、この映画の持つ余白の中で色々と想像しながら観るのも面白いだろうなって。

ダンスを見て、「うわっ凄い!!」「かっこいい!!」とか、「身体が凄く動くな……」とか、そういったことで圧倒されるというよりかは、それによって自分の中にある感情が沸騰したり湧き出てきたりする感じにさせられる。それは表現のあるべき姿のように感じます。

自分の音楽も「凄く耳心地がいい」とか「歌が素敵だな」という面だけに留まらず、それによってその人自身の中にある思い出や大好きな人のこと、そのような感情を引き起こしたいと、この映画を観たことを機に心から思えるようになったんです。

そういった聴き手の中の何かを引き出し、それと融合して、その人だけのかけがえのない楽曲になって欲しい。その辺りは今の私の音楽性とかなりリンクするものがあります。

 

text by 池田スカオ
photo by 山本春花