『ハリポタ』と『ファンタビ』のデザインを手がけるMinaLimaが表現する魔法ワールドの世界観
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最新作『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』の公開を記念して、ハリー・ポッターシリーズとファンタスティック・ビーストシリーズの「魔法シリーズ」両作品でグラフィックデザインを手掛けるデザインユニット『MinaLima』が来日!

今回は、劇中に登場するお尋ね者のポスターや「日刊予言者新聞」といったお馴染みのアイテム、オフィシャルグッズなどを手掛けるミラフォラ・ミナさんとエドゥアルド・リマさんのお二人のグラフィックス製作秘話を交えつつ、初来日で感じた日本のファンとの交流やデザイナーの視点で観る魔法ワールドの魅力についてたっぷり語ってくれました!
 

——今回の来日では、ファンの方たちと直接コミュニケーションをとる機会もあったそうですね。日本のファンには、どんな印象を持ちましたか?

ミラフォラ・ミナ(以下、ミナ): 実は、日本に来るのは今回が初めて。日本に行く前に「日本人はハグなんてしないから礼儀正しく」って聞いていたから、最初は遠慮がちにお辞儀をしたりしていたけれど、2日目には握手、3日目以降はみんなでハグ(笑)。みんなのことが大好きになったし、歓迎してもらえてとても嬉しかったわ。

エドゥアルド・リマ(以下、リマ): 自作のポストカードやプレゼントまで用意してくれたりね。

ミナ: そう。日本のファンは、すごく熱狂的。みんな涙ぐんだり言葉を失ったりしていて、そんな様子を見ていたら私たちまで泣けてきちゃった。コンベンションやロンドンのショップ『House of MinaLima』でもファンの人たちと交流することはあるけど、そうすることで彼らがどんなものを求めているのかが直に伝わってくるし、そこから着想を得ることもあるの。

——『ファンタスティック・ビースト』1作目の舞台は1920年代のニューヨーク。そして2作目の舞台は、パリ。それぞれの文化や風習、なおかつ過去の世界のものを表現するうえで、どんなことを意識されましたか?

リマ: ハリー・ポッターシリーズの場合、魔法ワールドの世界観を表現するのはおもしろかったけど、マグル(魔法を持たない人間)のシーンなんかは現代が舞台だから正直つまらなかったかな(笑)。そういう意味では、『ファンタスティック・ビースト』のほうが断然おもしろかった。マグルの世界でも1920年代のニューヨークやパリには、確固たるスタイルがあるからね。

ミナ: それゆえに、仕事の量は格段に増えたし、手の込んだことをしなきゃいけなかったの。なぜなら、その時代の街中にある広告やポスターはすべて手書きだったから。そういったことを念頭に置いて製作しなければいけないし、マグルの世界のものを魔法ワールド仕様に変えていくには工夫が必要だったわね。ただ、それぞれにはっきりとしたスタイルがあるから歴史ものを手掛けるのと同じ感覚で取り組めたし、今回は美術監督のスチュアート・クレイグとかなり緊密にやりとりをしながら進められたから、彼の世界観に乗せてグラフィックスを作っていけたのはすごく助かったわ。

——物語そのものはもちろん、魔法ワールドに登場するアイテム、本や手紙、ポスターといったアイテムひとつひとつが私たちをワクワクさせてくれます。

ミナ: アプローチとして一貫していたのは、現実世界にありそうなもののデザインから始めて20%ほど崩していくような塩梅で作っていくこと。魔法ワールドに登場する手紙や日刊紙は、リアル感をすごく意識しているの。なぜなら、J・K・ローリング自身が原作でそういうことをやっているから。読者があの世界を身近に感じられるのは、彼女が物語を100%ファンタジーフィクションにしなかったからだと思うの。

リマ: それは、衣装にしてもセットにも言えることだよね。

ミナ: 既視感はあるけど、魔法ワールドのものと感じられるバランス感。その彼女のアプローチを我々がデザインに活かしていくことで、観た人はそこにあるシチュエーションやものに共感することができる。だからこそ、何百万人もの人を惹き込んで、あれだけの人気を博したんじゃないかしら。

リマ: 『ファンタスティック・ビースト』では、脚本を手掛けていることもあってJ・K・ローリング本人が現場に来ることも多かったんだ。来たときには、必ず私たちの部門を訪ねてくれる。というのも、彼女にとっては僕たちがやっていることが一番身近なことのようで、「日刊予言者新聞」や画面に登場する本の表紙なんかは彼女が頭のなかで描いたものになるわけだからね。アメリカのとあるテレビ番組に出演したとき、「私が一番好きなのは、グラフィック部門だ」って言ってくれたことがあって。「本当に細かいところまで作ってくれるし、新聞紙だって中身までちゃんとデザインしてくれている」ってお褒めの言葉をもらえたのはうれしかったよ、イチバンね。

——イメージしていたものが具現化される喜びは相当なものでしょうね。

リマ: もちろん僕たちだけじゃなくて、スタッフみんなに対しても信頼を寄せてくれているみたいだし、特に美術監督のスチュワートには「私が1言えば10の世界を広げてくれる」って言っていて。彼女もすごくありがたいと思ってくれているみたいだよ。

——『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』では一体どんな世界が広がっているのか、大変多くのファンが楽しみにしていると思います。ちなみに、お二人はすでに完成した映像は見ていらっしゃいますか?

リマ: まだなんだ。観たくてしょうがないけどね(笑)。僕たちの場合、撮影完了後もポストプロダクションについての作業が発生するわけで。そこで仕上がった映像をちょこっと観たりすることはあるけど、あえて本編は観ていないんだ。公開前にロンドンでキャストと現場のスタッフ全員を集めた上映会があるから、そこで初めてちゃんと観ようかなって。願わくは、鳥肌が立つものになっているといいな。

——MinaLimaが手掛けるグラフィックスは魔法ワールドにリアリティをもたらす大切な要素であり、それを生み出すお二人自身がまるで魔法使いのようだと感じています。作品にとって、MinaLimaの役割とはどんなものだと考えていらっしゃいますか?

リマ: ハリー・ポッターシリーズを手掛けていたときは、自分たちがやっていることの影響を意識していなかったけど、ファンと交流するようになって出会ったなかには「あなたたちのおかげで、私の幼少時代はカラフルなものになった」「将来はグラフィックデザイナーになりたい」って言ってくれる人たちがいたんだ。それで初めて「僕たちがやっていることは、そういうことなのか」って気づくこともあったね。

ミナ: 私たちの役割は、みんなで作った世界観にディテールを乗せて、そのディテールをもって物語を語っていくこと。たとえば、『ハリー・ポッター』に登場する「忍びの地図」は、とある4人が作ったもので、それはどういう4人で、それぞれにどんな考えがあって……というふうに、ひとつひとつの背景にあるストーリーを考えるの。映画はみんなで作りあげていくもの。ファインアートを作るアーティストになりたいなら単独でやるのがいいけれど、映画はみんなで世界を作っていくことが大切だと思っているわ。

 

——壮大な物語の世界観は、チームワークと細やかなクリエイションによって形作られているんですね。そういったところに注目すると、新たな視点で作品を楽しめそうです。

リマ: 本当に素晴らしいものになっているので、きっと気に入ってもらえると思うよ!

公開が迫る『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』。これから初めて魔法ワールドに触れるという方はもちろん、もう何度も観た! という方も、ぜひMinaLimaによるグラフィックスを始め、細かい部分にも注目してみてくださいね!

 

text by 野中ミサキ