『君の膵臓をたべたい』で話題!4人組バンドsumikaが織りなすアットホームなライブ空間

sumikaは、そのバンド名通り、「多くの人の居場所」になれる作品やライブを目指し、アットホームで温かく、誰でもウェルカムで親しみやすい、そんな音楽を数多く輩出してきた。そして、そこに触れた者たちをみなどこか豊かな気持ちにさせ、聴き終えた際には不思議なバイタリティが溢れ、生命力がみなぎっていくのを感じさせてくれる。そんな彼らの魅力は、なんと言っても聴く者の気持ちをグッと自分たちに惹き寄せる、その吸心力溢れる楽曲やライブだ。ことライブにおいては会場の大小関係なく、いつでも一定の身近さを感じさせてくれる。実際、彼らの音楽やMCは、ステージからどれだけ離れていようが常に間近や傍らで放たれているように響くものばかり。それを表すように、2018年6月30日、2018年7月1日に行われた武道館2days公演の際、2階席で観ていた私にも、まるで間近で歌われているかのような身近さを味合わせてくれ、心に至っては、それすら飛び越えメンバーや楽曲との同化をみせていた。以下はそんなsumikaの簡単なプロフィールだ。

 
片岡健太(Vo./Gt.)、黒田隼之介(Gt./Cho.)、荒井智之(Dr./Cho.)、小川貴之(Key./Cho.)からなるsumika。前身バンドを経て、2013年に「様々な人にとってのsumika(住処)のような場所になって欲しい」との願いを込めて、片岡、黒田、荒井により結成。Shibuya Milkywayにて初ライブを行う。

 
2014年、購入者が自ら価格を設定して購入する、価格設定自由音源『Dress farm#1』、『Dress farm#2を発表。結成2年目にして初の全国流通音源『I co Y』のリリースに至る。

2015年、これまでサポートを務めていた小川が正式メンバーとして加入。6月には『Vital Apartment.』をリリース。しかし、片岡が体調不良の為、長期離脱を余儀なくされる。同年末には片岡も復帰。更に活動を活発化させていく。

2016年、両A面シングル『Lovers/「伝言歌」』をリリース。オリコンチャート15位を記録。同年5月には4thミニアルバム『アンサーパレード』を、また12月には1st EP『SALLY e.p』をリリース。オリコンチャート12位を記録し、着実にチャートアクションもアップさせていく。

2017年、<sumika「SALLY e.p」Release Tour>を敢行。Zepp ダイバーシティ東京を始め全会場ソールドアウト。同年7月には初のフルアルバム『Familia』をリリース。オリコンチャート5位を記録する。また、それらを引っ提げたツアーでは、初の単独ホールライブとなった東京国際フォーラム ホールAを含め、各所ソールドアウトを見せる。

2018年4月、フジテレビアニメ『ヲタクに恋は難しい』の初のアニメタイアップ・オープニング曲「フィクション」を収録した『Fiction e.p』をリリース。自身最高のオリコン週間3位を記録。5月から全国14か所16公演に及ぶ初の全国ホールワンマンツアー<sumika Live Tour 2018 “Starting Caravan”>を開催し各所喝采を受け、結成5周年記念イベントを含めた初の日本武道館公演3daysを実施。満場の中、大成功を収めた。

「武道館は武道館なりの他とは違った景色が広がってました。特にあの日は周りを囲んでもらっているかのような安心感もあって。あとはお客さんとの距離の近さには驚きましたね。ある種の感慨深さはありましたが、それもあのような大舞台を迎えるにあたり、ここまでズルをせず、きちんと自分たちの足で着実に一歩一歩進んできた結果があのステージにつながっていた種のもので。あの日はそれを噛みしめながら演奏しました」(Key./Cho.:小川貴之)

そしてこの秋、現在絶賛公開中の劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』の主題歌「春夏秋冬」、オープニングテーマ「ファンファーレ」、劇中歌「秘密」(サントラ盤のみ収録)と異例の3曲タイアップへと至る。


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今回収録の「ファンファーレ」「春夏秋冬」はそれぞれsumikaにとっての新章の始まりを高らかに、そして誇らしげに告げている作品印象を受けた。

まさしく自分たちをスタートさせた際の気持ちを、いま一度想い出して、そのマインドで作りました。今回は元々『君の膵臓をたべたい』の書き下ろしによるオープニングテーマと主題歌ということが先に決まっていたので、その作品に対してどのように掛け算をしていくか? をアニメの制作チームの方々と楽曲を作る以前に綿密に打ち合わせをしたんです。(Vo./Gt.:片岡健太)

元々この『君の膵臓をたべたい』はベストセラー小説。実写映画化もされ、それらはどれも大ヒットも記録した。そこに際するプレッシャーはいかがなものだったのだろう?

もちろん状況は知ってました。色々な場所でこの作品を称するにあたり涙という文字を見たし。で、実際に僕も読んで、涙を流しましたから。でも、逆にそこから、その涙の質がどのようなものだったのか? を深く探ってみたんです。(Vo./Gt.:片岡健太)

その涙の質がはっきりと自身の中で明確になり、そこを着地点に楽曲を作っていったことが伺える、この「ファンファーレ」。メロディもむちゃくちゃ力強く、全体的に非常に王道的なポップス路線を感じさせる。

「ファンファーレ」に関しては、もう素直に、かっこいいなとの直感を信じて弾きました。僕がこの曲を聴いた時の第一印象は、ギターを弾いてみたい!!でしたね。とは言え実は僕、ギターは全く弾けないんです(苦笑)。そんな僕に、かっこいいな、俺もギターを弾いてみようかな……と思わせてくれるぐらい初期衝動に溢れていたってことなんでしょう。(Key./Cho.:小川貴之)

この曲のデモを聴いた時に、メンバーがカッコ良く演奏しているシーンが思い浮かんだんです。そこを大事にしましたね。対して、「春夏秋冬」は映画を通じ、僕たちを知らない人たちにもしっかりと伝わるものにしなくちゃいけないとの意識をもって挑みました。(Dr./Cho.:荒井智之)

あえて(sumikaの)看板を背負わずに勝負したかったんです。結果、凄く王道になったとは自分たちでも感じていて。とりあえず演奏は一切妥協せず挑みました。(Gt./Cho.:黒田隼之介)

M-2の「春夏秋冬」は初のメンバー全員での作曲だったりもする。

この曲のデモを出した際に2パターン作ったんですが、どちらも自分も含め周りもしっくりこなくて。そこで客観性を持たす為に、一度時間を置いてみたんです。だけどそれでもしっくりこなくて。悪くはないけどベターであって、ベストではないなって。とは言え絶対にベターで妥協したくはなくて。もうひとあがきしてみようと。あえて原初とも言えるバンドのメンバー4人でスタジオに入り、そこで仕上げてみたんです。(Vo./Gt.:片岡健太)

この曲は彼らにとって初の試みであるバンドによる作曲がクレジットされたもの。これまでになかったタイプの作曲方法を用い、それがメンバー4人だけでスタジオに入ってこの曲をプレイしたことに他ならない。

スタジオでは自分たちでベースも弾きました(sumikaのベースはずっとサポートメンバー)。で、主にサビの部分をこれはどうかな?、これなんてどうだ?的な具合に、それこそ手さぐりでああでもない、こうでもないと仕上げていったんです。(Vo./Gt.:片岡健太)

この曲は歌詞の秀逸さも耳を惹く。

この作品の中で登場人物が伝え切れなかったことを全部書き出してみました。一番最後にこれを言いたかったんだろうなと思いつく言葉を書き出して。(Vo./Gt.:片岡健太)

この曲はあえて神妙に歌っていないところも特徴的だったりする。これほどまでにサウンドもメロディも力強く王道なのに対して、それらに釣られたり負けたりしないようにとの意識を窺わせず、あえて自然体で歌っている面も印象深い。

 
そして、シングルには未収録だが、サウンドトラック盤には劇中歌として起用されていた片岡作詞、小川作曲による、小川にとっては初の作曲担当曲「秘密(movie ver.)」も収録されている。

鍵盤弾きの小川の作曲らしくピアノが基調となり、その鍵盤のミニマルさも印象的な同曲。シンプルで柔らかく優しいナンバーで、アニメでも重要なシーンで流れ、場面共々胸をジーンとさせる。演奏面や歌においても、歌+αといったシンプルさとエレガントさを両立させ、行間や隙間も大切にし、収まっている女性コーラスやハーモニーも全体的に優しいものになっている。

そんな今回タイアップの劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』は、人気小説家、住野よるのデビュー作にして代表作を原作に展開されたもの。その後、『また同じ夢を見ていた』『よるのばけもの』『か「」く「」し「」ご「」と「」』『青くて痛くて脆い』と数々の青春人気小説を輩出してきた彼の初出作品でもある。

小説投稿サイトへの投稿が話題となり書籍化された経歴を持つ同小説。他人に興味を持たず、友だちも作らず、本を読むことが趣味の孤独な学校生活を送る図書委員である主人公の「僕」。その「僕」がある時、もう一人の主人公であるクラスメイトの「桜良」と偶然病院で出会う。「共病文庫」と題された余命日記を日々綴っていた桜良。それを偶然拾い読んでしまい、桜良が膵臓の病で、人生の残りが少ないことを、そこで知る。ただし、これは今後周りには一切内緒の秘密にしようと2人で取り決めていく。死期を悟りながらも、あえてそれを窺わせず、あえていつも通り気丈にふるまう桜良。そこから桜良が「死ぬまでにしたいこと」に「僕」をつき合わせることになる。とは言え、それは次第に、「僕」が「現実への扉を開け、他者との交流」「何気なかった日常からドラマティックな日常への変貌」「自身のアイデンティティの確立」へと次第に紐づいていく。そして、ここから最後に向けてのラストスパートという、そんな折、桜良が殺傷事件に巻き込まれ還らぬ人となってしまう。最後は当初、何気なく発していた「君の膵臓をたべたい」のフレーズが、いつしか恋や愛を超えた「僕と桜良を結びつける最上級の言葉」と化していく……。また、同小説は、このアニメ化の以前に実写化もされた。全編に渡り自然光を活かした淡い光が印象的なソフトフォーカスがかかったかのような手触りの画質の中、現在の大人時代を小栗旬、北川景子が演じ、高校時代の「僕」と桜良を北村匠海(DISH//)と浜辺美波が演じた。

この劇場版『君の膵臓をたべたい』は、小説とはまた角度を変えて描かれたもの。現在からの視点を軸に、そこに過去の想い出がオーバーラップし、インサートされていく運びだ。オリジナルにはない感動は、主人公桜良の死後、時間を経て再び時が交差し、その際に秘められた断片が最後ハマるかのように発見され、手渡され、すべてが報われ、浄化していくかのような感動的なラストシーンへと導いてくれるところ。また、同劇場版は、第41回日本アカデミー賞の「優秀作品賞」「優秀脚本賞」「新人俳優賞」「話題作品賞」も受賞。その秀逸な作品を今一度、この機会に見返して欲しい。対して劇場アニメ版は、2018年9月1日から全国ロードショーが始まったもの。こちらは原作や映画バージョンとはやや趣が異なり、入院中のエピソードのメモリアルや死後、主人公の「僕」が人と関わりを持ち出す「芽吹き」に焦点が置かれているのも興味深い。また、季節も主人公2人の名前になぞらせ春感に満ちた、極めて躍動感のある趣に仕上がっている。現在絶賛劇場公開中なので、こちらも是非ご覧になって欲しい。それぞれ違った角度から「僕」そして主人公の桜良への感謝と心の応援や死への悔やみ、温かい涙をそれぞれで流させてくれるのも興味深い、この『君の膵臓をたべたい』。是非ともこの機会に、3種を観比べ、読み比べ、それぞれの感動や温かい涙が溢れそうになる瞬間を体感して欲しい。

話をsumikaに戻そう。

2018年10月28日(日)からは<sumika『ファンファーレ/春夏秋冬』Release Tour>と題した、全国7都市11公演に及ぶオールスタンディングの会場にてワンマンライブツアーも控えている彼ら。こちらはこちらで前回のホールツアーとはまた違った彼らの身近さが味わえそうだ。重なる想い、楽しさの共有、気持ちの代弁、鼓舞してくれる、踊らせてくれる、現実を忘れさせてくれる、安心させてくれる……と、観た者毎、観る毎、楽曲毎に違った感受性を与えてくれるsumikaの楽曲やライブ。彼らと同じ空間に居ると、我が家に戻ってきたかのような空間性と温かみに満ち、どの曲も非常にリラックスして聴ける上、なんか無性に生命力やバイタリティ、明日への活力が湧いてくる……。まるで彼らの家に招かれ、そこでみんなと一緒にライブを愉しんでいる、そんな錯覚にさえ陥らせてくれるsumikaの楽曲やライブ。まだ彼らを未聴、または未体験の方は、是非この機会に耳にしてもらい、ライブ会場まで足を運んで欲しい。そこでは門戸を常に全開にし、いつでもウェルカムな彼らが待っていてくれるから。


 

text by 池田スカオ