ART-SCHOOLのフロントマン木下理樹が【映画と音の共存性】をテーマに紹介する映画とその劇中歌について
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映画と音とはお互い密接に関係し合い切り離せないものである。【映画と音の共存性】をテーマに映画の紹介とその劇中歌として使われた楽曲を紹介。映画の劇中歌5曲を紹介しているので、映画と併せてぜひ。
 

『(500)日のサマー』:「Us」/レジーナ・スペクター

まずは『(500)日のサマー』から。自由奔放に生きるヒロインのサマーとその言動に傷つき、落ち込むザ・スミス(The Smiths)が好きで奥手でナードな主人公という設定は、音と映像が見事にマッチングし、古典的かつ色褪せない新鮮さを秘めた秀逸なセンスを持った恋愛劇。軽やかでポップに彩られたサウンドトラックにはMV出身の監督マーク・ウェブのセンスの良さが実に効いている。

ストーリーはビタースウィートなのだが、飽きさせない演出力に舌を巻く。キュートな小悪魔的ヒロインを演じているのは何と言ってもズーイー・デシャネルちゃんだしね。若者は人生の勉強のために観ておくべきなのかもしれない。今観ても、何回見返しても、しんみり胸にくるものがあります。

その後の主人公トムこと、ジョセフ・ゴードン=レヴィットの世界的活躍は知らない人の方が少ないですし、【あの頃のモヤモヤしたすれ違う恋愛感】をまた体験したい人にもお勧めです。

俺は公開当時観た後、なんかトボトボと道を歩いてた記憶があります。こう書くとただひたすら暗そうですが、今となっては、音も、会話も、全てがなんか愛おしい映画。

 
1. 「Us」/レジーナ・スペクター


劇中で流れるレジーナ・スペクター(Regina Spektor)の「Us」を聴いた瞬間、恋に落ちます。そして貴方の記憶に何かしら残り、引っかかること間違いありません! 是非観てみて、それから聴いてみて下さいね。
 
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『ゴーン・ガール』:「At Risk」/トレント・レズナー

次に『ゴーン・ガール』。

オリジナル・サウンドトラック(以降、OST)を全般に監督しているのはデヴィッド・フィンチャー監督ともはや切り離せない、これが3作目のタッグ作になった我らがナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)のトレント兄貴だ。

 
2. 「At Risk」/トレント・レズナー
不穏な電子音、何が次に起きるのか分からないが自然な癒しの内省さと許しにも満ちた音世界と、絶対にカップルで観たくない映画No.1であろう苦々しいストーリーが、妙な覚め、そして洗練の極みに満ちたフィンチャー監督の徹底された美への探究心、カメラワークがあるいはその全てがトレント・レズナーの音響の美学と合わさった瞬間に圧倒的なエクスタシーを感じた。

デヴィッド・フィンチャー監督がトレントとタッグを組んでからの全作品の洗練のされ方は凄まじく、トレントとの相性の良さもたっぷりと証明されている。なんちゅうか人には特に興味が無く【ただ自分の描いたものを最高にするには】だけを考えた結果、無機質な透明さと微妙な不穏さ、機械みたいなんだよ。インダストリアル。

でも、不思議な人間さも同時に浮かび上がって、その頃のトレントの考える世界観と凄くフィットして、何回も彼等はタッグを組んできた、出逢うべきして出逢った恋人同士の様な。ナイン・インチ・ネイルズは勿論、トレント・レズナーってやっぱり凄まじい天才なんだって、世界的に知らしめた。

トレント本人は、そこまで意識してはいないと思うけれど、無意識化にある人間の持っている何か静謐な揺らぎと、機械的な何かは同居しているんだよと。ナイン・インチ・ネイルズは照明、映像への拘りが昔から凄かった。フラジャイルツアー(3枚目のアルバム『ザ・フラジャイル』に伴うツアー)のDVD観ると、すぐに解りますよね。

崩壊、再生へのプロミス、あのナイン・インチの光が欲しいって皆言うなあ~ライブ照明のプロに言われたこと何度もあるくらい、美しくて、残酷で、そして儚い。これはフィンチャー監督とハマらない方がおかしいんだ。どう考えても。是非に注目であります! そして聴いてみてください!

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『ディストラクション・ベイビーズ』:「DESTRUCTION BABY」/NUMBER GIRL

次に映画『ディストラクション・ベイビーズ』。

唯一の邦画ですが、ともかく意味なんてないんだよとばかりにキレまくる主人公の暴れっぷりに観た後、スカッとするこの感じ。タイトルに偽りなし。

そして劇伴主題歌は向井秀徳「約束」でありますが、もうNUMBER GIRLの「DESTRUCTION BABY」を、この際聴いてもらいたい。

 
3. 「DESTRUCTION BABY」/NUMBER GIRL
コントロール不能、コントロール不能の感情、気持ち。得体の知らないこの違和感。狂気を冷静に俯瞰しているから、観ていてなんかよく判らないが、乾いた感じがとても気持ち良く映画にフィットして聴ける。粘着質に壊れた音や、映画はともかく一切興味なし。とにかく乾いている、飢えている、ドライな暴力。

この様に映画における音楽とは、表裏一体なのだなあ。音がダサい映画、そういう類の物を俺は昔から一切信じていないし、映画音楽の美しさを知っているからだろうか、合ってないタイミングで、変な音が流れると急激に冷静になってしまう。総合芸術ですよ。映画は。そしてその中に必ず音というのは孕まれるはずなんです。ゴッドファーザーのテーマ曲なんて流れた瞬間、ああ、ドキドキします。話が外れてごめんなさい。

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『ザ・マスター』:「No Other Love」/ジョー・スタッフォード

ここからは失礼、音だけの話を挙げて行きたい。

『ザ・マスター』から、劇中歌ジョー・スタッフォードの甘くほろ苦い「No Other Love」今や死んでしまったフィリップ・シーモア・ホフマンの演技が、素晴らしく観るたび涙がこみ上げてくる。

ちなみにOST全般を担当しているのはレディオヘッド(Radiohead)のジョニー・グリーンウッドである。この作品以降、元フィオナ・アップルの恋人でもあるポール・トーマス・アンダーソンがレディオヘッドの新曲MVの監督をしたりと、お互いがとっても深い部分で強く共鳴し、信頼を寄せ合っているのがよく解りますね。そして彼等の拘り抜いた美学がまるで砂鉄の様に惹かれ合っていくのは、観ていてとってもよく解ります。

 
4. 「No Other Love」/ジョー・スタッフォード
此処まで散々書いてきたとおりに。それが無いとまずは信頼関係が成り立ちませんよね。

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『マグノリア』:「Save Me」/エイミー・マン

そしてまたポール・トーマス・アンダーソン監督の『マグノリア』からも一曲紹介したいと思います。

赦しの声を秘めた歌姫エイミー・マン(Aimee Mann)の「Save Me」を是非聴いてもらいたい。多種多様な視点から、圧倒的な繊細さと赦しの精神でラストに持って行く流れは、監督自身「エイミー・マンの歌を聞いたときに、ヒントをもらった」と言っているとおり、一筋の切なさ、優しさがこみ上げてきる。

実に繊細で大胆な表現力、そこに込められた想い、がこの声を聴いただけで湧き上がってきます。強く映像化したい! という稀有な声を持った、包み込む様な母性の声を持っている人ですね。エイミー・マン。全ての楽曲がお勧めです。

 
5. 「Save Me」/エイミー・マン

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この様に映画と音の共存性、それを強く認識している人たちを個人的に尊敬し、自分でも目指したいところの境地の一つなのだなあと今回、楽曲を選びながら、再確認致しました。聴いてくれたら幸いに思います。

 

 

text by ART-SCHOOL 木下理樹