【ネットで脚光を浴びた実力派アーティスト】DAOKOや米津玄師などおすすめ曲をご紹介
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テレビが話題の中心となっていたゼロ年代に比べ、2010年以降のテン年代はインターネットの普及によって話題の出どころが大きく変化してきた。それにより、音楽はより身近な存在になったといえる。

その理由として、例えば、今やお茶の間賑わすバンド・ゴールデンボンバーの勢いを加速させたのが動画サイトニコニコ動画のユーザーだったり、3人組ロックバンド・UNISON SQUARE GARDENが結成10年目で歴代最大の注目を集めたきっかけも、同サイト内で“祭り”状態が発生したことだったりで、様々な角度で話題を生んできたことが挙げられる。

このように、音楽の聴き方が変わったことで、アーティスト側の伝え方も多様化しており、インターネットは今や、素人の遊び場としても、プロの実験場としても活用されるエンタメ空間と化している。

なかには本気で音楽と接していた人がインターネットで評価を受け、プロとして成功を収める、といった事例もある。

そこで今回は、インターネットを出自とし、邦楽ジャンルで注目を集める音楽アーティストをピックアップした。簡単なバックボーンとおすすめ楽曲をご紹介したい。

 

ニコニコ動画出身!DAOKOや米津玄師など現在邦楽シーンで注目を集めるアーティスト

 
1. 「アンノウン・マザーグース」/ヒトリエ

ネット音楽シーンで絶大な支持を誇り、メジャーデビューを飾ったバンド・ヒトリエ。同バンドは、“現実逃避P”名義で「裏表ラバーズ」「ローリンガール」「ワールズエンド・ダンスホール」などのVOCALOIDオリジナル楽曲を手がけたwowaka(vo/gt)を中心に、シノダ(gt)、イガラシ(ba)、ゆーまお(dr)のメンバーで結成された4ピースバンド。 

VOCALOID楽曲ファンはご存知だと思うが、wowakaの楽曲は、一般的に“再現不可“と考えられる性急な16ビート、無機質で激しいメロディラインが特徴的だ。それをバンドに持ち込んだとしても、物ともせずに再現する技術力の高さ、グルーブ感を持ち合わせているのが、ヒトリエだ。ライブ映えする強力なナンバーが胸をときめかせてくれる。

そんな彼らの楽曲のなかから「アンノウン・マザーグース」をピックアップ。同楽曲は、wowaka名義では約6年振りとなるVOCALOID楽曲として、2017年8月にニコニコ動画、YouTubeで公開。その後、ヒトリエでリアレンジしたセルフカバーverを発表した。一言で言えば、間口が広い楽曲である。

各楽器の音色に耳を持っていかれる緻密かつ疾走感のあるA/Bメロから、wowakaが考えるロックの理想形を体現したような、温もりのあるサビへの転調がおもしろい。

また、ヒトリエとしてのwowaka、現実逃避Pとしてのwowakaの間で揺らめく葛藤を綴りながらも、低迷するVOCALOIDカテゴリへの寂しさをうたう歌詞にも注目してほしい。


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2.  「Fog」/DAOKO

快進撃を続けるラッパー、DAOKO。今や幅広い世代から支持を集める彼女も、ネットシーンで注目を集めたことが原点となっている。

ニコニコ動画の“歌ってみた”カテゴリには、VOCALOID楽曲をラップ調にアレンジする“ニコラップ”というジャンルが存在する。歌ってみたカテゴリには素人のカラオケ動画と嘲笑する風潮もあるが、彼女の才能を発揮するには十分すぎる場所だった。

彼女が“だをこ”名義で“ニコラップ”の動画を投稿したのは2011年、15歳の頃。憂いを含んだウィスパーボイス、気だるげなフロウがリスナーを魅了し、すぐさま注目を集めるようになった。

その後、インディーレーベル〈LOW HIGH WHO? PRODUCTION〉と契約し、立て続けに楽曲をリリースした。

なかでも、同レーベルから発売された1stアルバム『HYPER GIRL -向こう側の女の子-』の「Fog」は必聴である。小悪魔的な一面は当時から片鱗を示しており、心揺さぶるリリックとラップが相まって、DAOKOワールドへ引き込まれてしまう。

「Fog」は、中島哲也監督の映画『渇き。』の挿入歌に抜擢されているため、一度耳にしたことのある方も多いのではないだろうか。ともあれ、初期DAOKOも最高だ。絶妙な不安定さがたまらない。

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3.  「Be Noble」/ぼくのりりっくのぼうよみ

デビューから2年足らずで3枚ものアルバムをリリースし、恐ろしいスピードで進化し続けるぼくのりりっくのぼうよみ(以下、ぼくりり)。彼もまた、“ニコラップ”をとおして注目を集めたラッパーである。2012年に“紫外線”名義で歌ってみた動画を初投稿、同年ぼくのりりっくのぼうよみ名義でオリジナルのラップ曲を投稿していた。
 
2015年に1stアルバム『hollow world』をリリースし、メジャーデビューを果たす。

デビュー当時の彼の凄さは、決まり文句を一切回避した言語表現で綴るリリック、17歳(当時)とは思えない表現力であり、動画サイトの再生数やSNSのフォロワー数など権威的なものではなかったことだ。

そんな彼の楽曲でイチオシなのは、1stシングル『Be Noble』だ。デビュー時のセールスポイントして掲げられた若さとの決別をテーマにした一曲で、高校生にして現実社会に放り込まれ体験したどうしようもない感情が鮮明に綴られている。

トラックは、ニコ動時代からの戦友・ササノマリイ(ねこぼーろ)との共作だ。タイトに折り重なるサウンドとエモーショナルな疾走感で、少年から大人になる決意をうたうナンバー。


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4.  「メランコリー」/サイダーガール

万人が痺れる炭酸系ロックバンド、サイダーガール。同バンドは、メンバー全員がニコニコ動画で活動しているクリエイター、Yurin(vo/gt)、フジムラ(ba)、知(gt)が集結したスリーピースバンド。

2014年の活動開始から約3年後の2017年7月にメジャーデビューを果たす。Yurinが“ゆりん”名義で知の楽曲の歌ってみた動画を投稿していたことがバンド結成のきっかけになったため、結成直前までメンバーの顔を知らなかったそうだ。

“炭酸系”とは、ご想像のとおりしゅわしゅわと細かい気泡が弾けるそれだ。ヒットナンバー「メランコリー」を聴けば腑に落ちるだろう。

タイトルに反してエネルギッシュなロックサウンドでありながら、モラトリアム期間特有のデリケートな心情をまろやかに表現した詞が、感情を優しく包み込み前向きな気持ちにさせてくれる。

Yurinの力の抜けた歌声と青春パンクに近い甘酸っぱいメロディの絶妙なバランス感覚が癖になり、何度も何度も聴きたくなる楽曲だ。そう、まるでリフレッシュしたいときに炭酸飲料が飲みたくなるあの感覚のように。


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5.  「ひび割れた世界」/majiko

シンガーソングライター、majiko。2017年2月にメジャーデビューを飾るまで、彼女の看板には“歌い手”というレッテルが付きまとっていた。ここで言う“歌い手”とは、本来の歌う人、歌手という意味合いではなく、音楽経験もなしにネットに歌唱動画をアップロードする人というものだ。

歌手としての実力をミキシング技術でカバーできるだけに、ライブの評価は大きく別れるどころか、批判の多い界隈でもある。

majikoは、ライブをきっかけに注目を集めた一人だった。アッパーな楽曲に身を委ねるのではなく、歌そのものでオーディエンスを魅了したことでたちまち話題となったのだ。YouTubeで160万再生を誇る「心做し(LIVEver)」を見ていだければ、その実力がハッキリと分かるだろう。

そしてメジャーデビューを迎え、1年半で2枚のミニアルバムをリリースした。その楽曲は、ポップなものからヘヴィなもの歌いこなし、彼女自身の変化につれて研ぎ澄まれていく。

なかでもデビュー後初となるシングル『ひび割れた世界』は、シンガー・majikoとしての魅力がふんだんに詰め込まれたナンバーとなっている。


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6.  「砂の惑星」/米津玄師

今や国民的な知名度を誇るアーティスト、米津玄師。最近では、ドラマ『アンナチュラル』の主題歌「Lemon」が話題を呼び、2018年3月14日(水)の発売から1週間を待たずにミリオンセールスを叩き出したことが記憶に新しい。

2018年7月現在のYouTube累計動画再生回数は約9億8千万再生。既に言わずと知れた存在だが、ここではあらためて、2017年11月に発売された4thアルバム『BOOTLEG』に収録されている「砂の惑星」を紹介したい。

今でこそシンガーソングライターとして活動している米津だが、彼の原点もまた、ニコニコ動画だった。同サイトの黎明期となったゼロ年代後半、“ハチ”名義でVOCALOIDオリジナル楽曲の投稿を始め、「マトリョシカ」「パンダヒーロー」、「Mrs.Pumpkinの滑稽な夢」など次々とヒット曲を生みだした。

そして2012年5月にリリースした1stアルバム『diorama』にて、米津玄師名義での活動をスタート。同アルバムに収録され自身の歌唱曲「アイネクライネ」は、2018年3月にYouTube上で1億再生を突破するほどの人気を誇る。

その後、メジャーデビューシングル『サンタマリア』をリリースする際に「VOCALOIDに頼らないスタンス」を掲げ、以降はVOCALOID楽曲と距離を置いてきた米津だったが、初音ミク10周年という節目に「次世代へのバトン渡し」の意を込めて制作した楽曲がある。それが、「砂の惑星」だった。

先述したヒトリエの「アンノウン・マザーグース」では、《つまらない茫然に溺れる暮らし 誰もが彼をなぞる》という一節があるが、「彼」はおそらく米津のことを指しているのではないだろうか。

それほど現代のVOCALOIDシーンに影響を及ぼす存在であり、「砂の惑星」は、“ハチ”を応援していた全ての人の心に刺さる一曲なのだ。


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text by Yuta Ishikawa